ロンドン・オリンピックの熱戦は素晴らしかったが、こちらの熱戦も感動的だった。タイヤサービスマンの金メダルの獲得を目指すブリヂストンの技能オリンピックである。
技能オリンピックの実技競技の設定は、トラックドライバーから右後輪内側パンクタイヤの修理を依頼されるところから始まる。ちなみに競技に使用された4×2トラクタは、前輪は8スタッドのJIS方式、後輪は10スタッドのISO方式という、ブリヂストンの研修センター保有の車両である。
作業の流れは、4×2トラクタのジャッキアップ、外輪取り外し、内輪取り外し、パンク修理(ただしこの作業は省略)、空気充填(内輪のみ)、ハブ/ホイール/ナットの清掃点検、内輪取り付け(トルク管理)、外輪取り付け(トルク管理)、ジャッキダウン、後片付け、作業報告書作成など。この間に全輪の不具合箇所の有無の点検も行なっている。それが終了した後、ドライバーへの報告となる。
テストハンマーで全輪の点検も行なう
ドライバー(左の人)への報告の仕方も審査の対象になる
もちろん、こうした実技を各審査員が厳しくチェック。締付けトルクの精度の検定や不具合の発見能力も審査されるし、選手も非常に緊張しているのが分かる。ちなみにドライバーへの報告もコミュニケーション能力として審査の対象となっているので、気が抜けないのだ。こうして選手は汗だくで競技を終えるのだが、制限時間を短縮すると加点、オーバーすると減点となるので、キビキビとした動きでテキパキと作業をこなしていたのが印象的だった。
審査員には、前年最優秀賞を獲得した水上弥亮マイスターの姿も……
全選手の競技終了後、ブリヂストンの技能マイスターである森秀夫氏、井手誠氏からISO取り付け方式車を使っての模範演技が披露される。この技能マイスターは、この技能オリンピックで特に優秀な成績をおさめた選手だけがなれる、タイヤサービスの「トップガン」といった存在で、まだ全国に7人しかいない。技能マイスターは、ブリヂストンのタイヤサービスマンの技能の伝承や後進の育成にあたっている。
黒一色のユニフォームを着た技能マイスターの作業は、さすがにそつがない。途中、ISO取り付け方式の解説もしてくれるので、非常に勉強になる。
森マイスターによるISO方式のトルク締めの実演
井出マイスターはリム組みの実演だ
そして、いよいよ受賞者の発表だ。優秀賞には、関東地区からブリヂストンリテール長野タイヤセンター大橋の成澤真さん、西日本地区からBCTS西日本広島東部店の片岡雅之さん、そして最優秀賞には同じく広島東部店の末次信二さんが選ばれた。そして栄えある技能マイスターには総合的に高い評価を得た成澤真さんが認定された。
ブリヂストンタイヤジャパンの梶原浩二取締役・専務執行役員から表彰を受ける、左より成澤さん、末次さん、片岡さん
タイヤサービスマンの仕事は、これまで表舞台に出ることのない、裏方的な仕事だったが、彼らが人知れず汗を流してトラックの安全を足元から支えていることは、もっともっと世間に知られていいと思う。「現場」の人たちの頑張りに金メダルを! ブリヂストンの「技能オリンピック」はそんなイベントだった。
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