医薬品卸売大手のアルフレッサとヤマト運輸は、近年の異常気象による猛暑下でも医薬品を安全かつ確実に配送するため、「小型EVトラック」と「断熱・保冷機能付きの輸送用機材」を活用した医薬品配送の実証実験を開始した。
猛暑が続く中、医薬品の温度管理も課題になっているが、定温で環境に配慮した配送システムとして注目される。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/ヤマト運輸
医薬品配送の定温化と環境への配慮を両立
近年の異常気象による夏場の猛暑の常態化により、医薬品の温度管理が課題となっている。
また、医薬品配送の分野でも脱炭素化への対応が急務となっており、アルフレッサグループは、「25–27中期経営計画Vision2032 Stage2 ~総合力で未来を切り拓く~」における重点項目のひとつである「サステナビリティ経営の推進」において、8つのサステナビリティ重要課題を新たに特定。地球環境保全や医薬品・サービスの安定供給など、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ全体で推進している。
いっぽうヤマトグループは、2050年GHG(温室効果ガス)自社排出実質ゼロの実現に向けて、EVや太陽光発電設備の導入などを進めている。
ドライアイスを使用しない、クール宅急便の配送方法として車両に「D-mobico」の導入を促進しているほか、2024年10月からは、これまで培ったEV導入などのノウハウを生かし、車両を使用する事業者の脱炭素化を支援する「EVライフサイクルサービス」の提供も開始している。
このEVライフサイクルサービスを通じて、アルフレッサグループはCO2排出量削減に向けた取り組みを加速。まずは、2024年12月18日から5拠点にEV45台を順次導入した。ちなみにアルフレッサグループはEVライフサイクルサービス導入のファーストユーザーである。
小型EVトラックとモバイル冷凍機で効果を実証へ
今回の取り組みは、その第2弾と言うべきものとなる。昨年12月に導入された45台のEVは軽バンベースだったが、今回の実証実験では1トン積の日野デュトロZ EVを使用。
期間は2025年8月18日~8月29日で、場所は東京都府中市のアルフレッサ府中事業所。アルフレッサは当該車両で府中事業所の担当病院へ医薬品を配送し、ヤマト運輸は小型モバイル冷凍機「D-mobico」を搭載した、断熱・保冷機能付きの輸送用機材を提供する。
検証項目は、
・断熱・保冷機能付きの輸送用機材を使用した医薬品配送時の温度品質の確保と配送オペレーションの構築
・1トントラック使用による配送効率の向上効果
・EV使用によるGHG排出量の低減効果
となっている。
実証実験を通じて得られたデータを基に、アルフレッサは使用機材および配送オペレーションの導入を検討。また、「D-mobico」は電気を駆動源としているため、すでに導入済みのEV、エネルギーマネジメントシステム(EMS)に加え、太陽光発電設備の導入なども視野に入れ、消費電力を再生可能エネルギーで賄うことも検討している。
「D-mobico」はデンソーがヤマト運輸と連携して開発した小型モバイル冷凍機で、小型・軽量で持ち運び可能とした上、使用用途や荷量に応じて断熱箱の形状・寸法を選択できるため、さまざまな配送に柔軟に対応できるのが大きな特徴になっている。
モバイルバッテリーで駆動しエンジンに負荷をかけず、ドライアイスも使用しないため、走行中の燃費向上やCO2排出低減に寄与し、配送車両のEV化にも貢献。ヤマト運輸では2021年2月から配送車両へのD-mobicoの導入を開始している。
【画像ギャラリー】アルフレッサの医薬品配送に用いられるEVとモバイル冷凍機(4枚)画像ギャラリー
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