AT限定普通免許で運転できるいすゞの小型トラック「エルフミオ」に設定されているEVモデルに試乗! ディーゼル車との違いは? EVモデルならではの特徴は? ベテラン編集部員がレポートします!
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年12月発売「フルロード」VOL55より
無音で加速するディーゼル車のような加速フィール
試乗車はメーカー完成車の「エルフミオEV軽量バン」。車体メーカーのパブコと共同開発した汎用バンボディを架装するモデルで、最大積載量は950kg。車両サイズは全長4840×全幅1745×全高2750mmで、最小回転半径は4.4m。試乗時は空荷だった。
キーレスライド装備のエルフミオEVは、ステアリングコラムのスイッチを回して起動する。キーは挿さないものの古典的な作法で、これはディーゼルモデルも共通だ。スタート時のバッテリー充電率は97%、航続可能距離は121kmという表示だった。
シフトレバーDレンジ、車両接近通報装置の人工音を聴きながらクリープで車道まで寄せ、一挙にアクセルを踏み込む。試乗時の車両総重量は2.5トン程度のはずだが、その加速はいかにもEV的な猛ダッシュではなく、さながら「無音で加速するディーゼル車」で、「静かなのに速い」というのがもっともしっくりくる表現である。
実は7代目エルフのEVモデル開発では、その走りを意図的にディーゼル車に寄せている。開発エンジニアから伺った話では、今はEV特有のドラビリに慣れた人が少ないこと、また積荷を傷めない走り方を心得たドライバーには、ドラビリの激変が歓迎されないこと……、がその理由という。
登り坂や高速道路で実感するEVトラックのメリット
一方、エルフミオEVには、いままで実現したくともできなかった走りを、EVで叶えているかのように思えるところもある。その代表例が、登り坂での優れたドライバビリティだ。
それを鎌倉の急峻な地形で試してみたが、発進・停止がストレスなく行なえ、登りと下りとカーブが長く混在して続くような道でも、粛々と制限速度40km/hを維持して走破する。これは動力に関わらず、ドライバーにとってメリットの大きい性能だと思う。
もうひとつは、高速道路など高い速度域での加速性である。壁のような荷箱を導風板なしで背負うにも関わらず、追越し加速での力強さと俊敏さは、もはや小型トラック離れした印象され覚えるものだった。充電率は一気に10%ほど減らしてしまったが……。
ところでエルフミオEVには、補助ブレーキとして回生ブレーキが備えられており、排気ブレーキと同じく左側コラムレバーにより2段階の強さを選べる。有用だが制動力はどちらかというと控えめで、筆者は最終的に2段目を常時ONにしていた。
パワーメーターを見る限りでは、回生電力も大きくなさそうだったが、これは空荷が影響している可能性がある。なお停車に至るにはフットブレーキとの併用が必須。ディーゼル車に近いドラビリを指向している点から、ワンペダル運転に相当するモードはもとから存在しない。
疲れにくいキャビンと自然なステアリングフィールが印象的
今回の試乗では、湘南エリアを約3時間で65km走行した。すべて舗装路ではあるものの、道中には段差やひび割れ、ポットホールが散見される区間もあり、必ずしも良路ばかりではなかった。
試乗車のサスペンションは、前輪が横置きリーフスプリング付ダブルウィッシュボーン独立懸架、後輪がオーバースラング2枚リーフスプリング付固定軸である。
空荷で小径タイヤを履くクルマだったため、乗り心地を硬めに感じたが、シートが振動を効果的に吸収しており、身体は意外に疲れなかった。
また、電動アシスト付油圧パワステを搭載することから、荒れた路面での進路ふらつきも抑えられていたようで、これも疲れにくい理由のひとつだと思う。
ほどよい軽さの操舵フィーリングはやや人工的だがスムーズで、ドライビングポジションの合わせやすさにこだわった標準キャビンだけに、ハンドル操作は自然な姿勢でラクに行なえた。
帰着した時点での充電率は49%。航続可能距離は61kmとなっていた。空荷とはいえ、このまま走行を続けると国交省審査値の115kmを超える可能性もあったことになる。
法人がメインユーザー層となるエルフミオEVのなかでも軽量バン完成車は本命モデルになると見られるが、そのサイズ設定やドラビリは、トラック運転が初めてのドライバーにも「いいクルマ」と感じられるように思われた。
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