ホンダが日本で2月に世界初公開した次世代燃料電池モジュールが米国でもデビューする。これに合わせて米国ホンダは燃料電池大型トラックの走行試験の映像を公開した。
米国では燃料電池トラックに逆風が吹いているが、巻き返しに向けてコスト・耐久性・出力などを大幅に強化した次世代燃料電池モジュールに期待がかかっている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Honda Motor Co., Ltd.・American Honda Motor Co., Inc
ホンダの次世代FCモジュールが米国デビュー
ホンダは2025年2月に日本で開催された「H2 & FC EXPO【春】~第23回 水素・燃料電池展~」で次世代燃料電池(FC)モジュールを世界初公開しているが、同機は4月28日に開幕する「アドバンスト・クリーン・トランスポーテーション・エキスポ」(ACTエキスポ)で米国デビューを予定している。
ACTエキスポは主に商用車・運送業界向けに毎年開催されるトレードショーで、近年はトラック・商用車関係の新技術が公開されることが多くなっている。
また、これに合わせてアメリカン・ホンダ・モーター(以下、米国ホンダ)は4月22日、クラス8トラック(米国のトラック区分で最も重いクラス)による燃料電池電気自動車(FCEV)の実際の試験走行の様子を映像で公開した。このFCEVトラックはACTエキスポにも展示し一般公開する予定だ。
動画: Class 8 Hydrogen Fuel Cell Truck Concept
ホンダは次世代FCモジュールを2027年に生産開始する計画で、現行型のモジュールと比較して生産コストを半分に削減するいっぽう、耐久性は2倍、容積出力密度(単位容積当たりから出力可能な電気エネルギー)は3倍に高めたという。
同社のFCモジュールの歴史を整理すると、2016年に発売したCLARITY FUEL CELL搭載モデル(2019年に製造終了)が初代に当たり、現行型は米ゼネラルモーターズと共同開発したもので2024年に登場している。したがって次世代FCモジュールは第3世代に当たり、ホンダが独自開発したものだという。
(余談だが、燃料電池展ではトヨタも同社製の第3世代FCモジュールを公開しており、大型トラック・重機などにアプリケーションを拡大している。)
ホンダは2050年までにすべての製品と企業活動におけるカーボンニュートラルを実現するとしており、水素事業の拡大に向けてビジネスパートナーの模索を続けている。
米国ホンダの水素ソリューション開発担当アシスタントマネージャー、デイビッド・パージンスキー氏は次のように話している。
「ホンダは北米での水素事業をオープンに進めています。この事業には燃料電池とともに、関係する専門知識と、トラックや定置発電機などのゼロ排出製品に燃料を供給するためのサプライチェーンも含まれています。次世代のFCモジュールの生産は、脱炭素を実現する手段として水素を推進する弊社の取り組みを表しています」。
ホンダの水素戦略:4つのコア領域
ホンダは燃料電池モジュールの活用が始まる領域として4つのコアドメインを挙げている。すなわちFCEV乗用車、FCEV商用車、定置発電機、建設機械の4つだ。パージンスキー氏はACTエキスポで「フリートのための水素エネルギー」をプレゼンテーションすることにしており、とりわけ商用車における水素戦略についてより詳細な情報を提供する。
ホンダはACTエキスポで次のような展示を行なう予定だ。
FCEVクラス8トラックコンセプト
ホンダのFCモジュールを搭載するクラス8トラックのコンセプトモデル。カリフォルニア州での走行試験の様子が新たに映像で公開された。このコンセプトモデルには「CR-V e:FCEV」に搭載する現行型のFCモジュールが3機搭載されている。
現行型FCモジュール
ホンダとGMが共同開発したFCシステムによる現行型のFCモジュール。従来世代(第1世代)と比較して性能を向上しつつ耐久性を2倍に、コストは3分の2に削減した。
次世代FCモジュール
2027年に生産開始予定の次世代FCモジュール。ホンダが独自開発しており、潜在顧客との協議も既に開始しているそうだ。従来(第2世代)と比較してコストを半減させ、耐久性は2倍、容積出力密度は3倍に高める。
FC発電システム
工場、データセンター、オフィスなどの大規模施設に水素由来の電力を供給する発電システム。ホンダのFCモジュールを複数組み合わせることで260kWから3MWまでの電力供給が可能だといい、2026年に量産開始を予定している。ACTエキスポでは10分の1スケールのモックアップを展示する。
2025 Honda CR-V e:FCEV
アメリカで初めて量産するプラグインFCEV乗用車。現行型のFCモジュールが搭載される。
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