消費者にとっては魅力的だが……
以前、全ト協が標準的な運賃キャンペーンで「『送料無料』じゃありません!」というインターネット広告を一般消費者向けに出していたので、覚えている方も多いだろう。
インターネット通販などで送料を別途払う必要がない「送料無料」表示は、消費者にとっては魅力的だが、トラックドライバーなど物流当事者を軽視する印象を与えかねない。その見直しが必要な理由について消費者庁は、次のような認識を抱く消費者がいるためと説明している。
・「送料無料」とはいえ、誰かが送料を負担していることは消費者も理解している。しかし、どのくらいのコストを誰が負担しているのかまでは、(消費者は)考える必要がない
・商品価格に送料が含まれている場合と送料別の場合で、消費者の選択が異なる場合がある(例えば、「商品価格3000円+送料無料」と、「商品価格2500円+送料500円」だと、なんとなく前者のほうが得だと思ってしまう)
・安価な商品であってもまとめ買いすることなく単品で購入し、何回配達してもらっても気にならない(例えば、100円のボールペンを必要な時に1本ずつ購入するなど)
・配達日時に不在にして再配達をしてもらっても、ドライバーさんには悪いと思うが、送料無料だから費用負担がなく、そこまで気にしない
こうした認識は一面では正しいのかもしれないが、2024年問題を乗り越えて持続可能な物流を実現するためには、消費者にも意識改革・行動変容が求められている。ただ「送料無料」表示は既に定着していることから、「禁止はしないが、その仕組みなどをわかりやすく説明するべき」という方針がまとめられた。
今後は、消費者庁として事業者の自主的な取り組み状況を注視していく。
いま、消費者にできること
インターネットで買い物をすれば、翌日には荷物が届くのが、今では当たり前になっている。これを実現しているのは、国内貨物の9割を運んでいるトラックドライバーだ。増大する物流の負担をトラックドライバーに押し付けるだけだと、長時間労働や低賃金など、担い手不足はさらに深刻化するだろう。
送料無料表示の見直しを契機に、消費者が「2024年問題」を自分事として考え、意識と行動を変えて行かないと、今の「当たり前」が維持できなくなっている。
物流の負担を軽減するために、消費者として何ができるのか? 消費者庁は「まず、次のようなことを考えてみてください」と呼び掛けている。
1.その商品、明日どうしても必要なものでしょうか?
荷物を急いで運んでもらうために、ドライバーに無理な運行を強いている可能性があります。急いで受け取る必要のない荷物については、ゆとりを持った配送日時を指定しましょう。
2.配達日時に、確実に荷物を受け取りましょう
宅配便の再配達率は、十数%にも上ります。再配達のためには、再びあなたの自宅を訪問しなくてはなりません。配達日時に不在にすることを避けたり、置き配やコンビニでの受け取り、宅配ロッカー等を活用したりするなどして、再配達をお願いすることをなくしましょう。
3.持続可能な物流の実現のため、物流業者、宅配業者の方々の私たちの生活の中での重要性を理解しましょう
荷物が私たちの手元に届くまでには、自宅まで配達していただく方々のほか、例えば、配送センターでの仕分け(ピッキング)や梱包作業、トラックへの積込みなど、多くの方の人手がかかっています。そうした方々の働きのおかげで、物流が維持されているのです。
コメント
コメントの使い方