今年6月に取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」の施策の目玉1つ、「トラックGメン」がいよいよ発足した。
トラックドライバーの労働条件を改善することを目的に誕生したトラックGメンだが、果してどんな組織でどんな業務を行なうのか、実効性はあるのか?
文・写真/フルロード編集部、イラスト/国土交通省
全国162人体制で発足したトラックGメンとは?
荷主・元請け絡みのトラックドライバーの困りごとといえば、「長時間の荷待ち」を筆頭に「依頼になかった付帯業務」「運賃・料金の不当な据え置き」「過積載運行の要求」「無理な配送依頼」「拘束時間超過」「異常気象時の運行指示」などがあげられる。
文句のひとつも言いたくなるのは尤もだと思うが、荷主・元請の「優越的地位の濫用」を恐れて、文句ひとつ言えないというのが中小零細の運送会社とドライバーの辛い立場である。
今回のトラックGメンは、そんな荷主・元請の「悪行」に斬り込もうという行政の試みである。その背景にあるのは「2024年問題」だ。
国土交通省など関係省庁は、貨物自動車運送事業法(トラック法)に基づく荷主等への「働きかけ」「要請」等による是正措置を講じてきたが、この「2024年問題」に前に、さらに強力な対応が必要との判断から、新たにトラック荷主特別対策室、通称「トラックGメン」を設置。荷主等への監視体制を緊急に強化し、荷主対策の実効性を確実なものにしようと意気込んでいる。
7月21日には、国土交通省や地方運輸局等でトラックGメン辞令交付式を実施。創設にあたっては、国土交通省の既定定員82人の既存リソースを最大限活用するとともに、新たに80人を緊急に動員し、合計162人の体制で業務を遂行するという。
「荷主対策の深度化」へ体制をさらに強化
荷主や元請の「悪行」を改めさせようという動きはこれまでもあったが、正直いって実効性は薄いものだった。そこで徐々に制度を強化し、関係省庁との連携を図りつつ、実効性を高めていこうというのが行政の方針で、これを「荷主対策の深度化」という。
その「荷主対策の深度化」の一環として、トラックGメンではこれまでより積極的な姿勢に転じている。辞令交付式で訓示した鶴田浩久自動車局長は、
「国土交通省では、適正な取引を阻害する行為を是正するため、これまでも貨物自動車運送事業法に基づき、荷主企業・元請事業者への『働きかけ』『要
請』等を実施してきたが、依然として荷主等に起因する長時間の荷待ちや、運賃・料金等の不当な据え置き等が十分に解消されたとは言えない状況となっている。
このため、本日設置した『トラック荷主特別対策室』による体制の強化により、
トラック事業者へのプッシュ型の情報収集を開始し、情報収集力を強化するとともに、貨物自動車運送事業法に基づく荷主企業・元請事業者への『働きかけ』『要請』『勧告・公表』制度の執行力を強化する。
こととし、荷主側の事情による長時間の荷待ちや、運賃・料金の不当な据え置きなどの是正に向け、関係省庁や産業界とも緊密に連携しつつ、一層強力に取り組んでまいりたい」と述べている
注目されるのは、プッシュ型の情報収集という点だが、これまでは国交省HPの意見募集窓口や地方運輸局の相談窓口など、いわば「待ちの情報収集」だったのに対し、今後は業界団体に協力してもらい、全国の運送事業者に荷主等に対する困りごとを記してもらう書類などを発送。それを定期的に実施することで、積極的に情報収集を図るとしている。
そこで得られた情報は必要に応じて聞き取り調査などを行ない、「悪行」の疑いが濃厚な場合は関係各省庁とも情報を共有し、荷主対策に活かされるという。さらに直接現場に赴いて実態調査をすることも検討中だ。
荷主や元請が違反行為をしている疑いが認められると、まずは改善への「働きかけ」を行ない、さらに違反行為をしていることを疑う相当な理由がある場合は「要請」を行なう。「要請」してもなお改善されない場合は「勧告・公表」を行なうというものだ。
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