国土交通省は令和2年に価格交渉力の弱い中小運送事業者のために「標準的な運賃」を告示しているが、この度、その一部として「燃料サーチャージ」の計算方法等を告示した。つまり高騰する燃料価格は適切な形で運賃に含まれるべきという国交省の立場を明示した形だ。
燃料サーチャージは航空業界などでは一般的な制度で、陸上輸送への導入を求める声も多いが、トラック運送業での普及が進んでいるとは言い難い。改めて燃料サーチャージとは何か、算出方法や標準運賃との関係などを解説する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部・国土交通省
国交省が「標準的な運賃」の一部改正と「燃料サーチャージ」計算式を告示
トラック運送業には中小の事業者が多く、荷主に対する運賃交渉力が弱いとされる。物流の担い手不足が深刻化するなか、トラックドライバーの賃上げや運送会社の経営改善を進めなければならないが、その原資となるのが運賃だ。
物流が直面する課題の多くは、運賃が低いという根本的な原因に根差しており、荷主対策を進めなければ解決は不可能だ。このため国土交通省はトラック事業者と荷主の運賃交渉を促進し、適切な運賃の収受を実現するために、2020年4月に「標準的な運賃」を告示した。
これは「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」に基づくもので、「ドライバーの給与を全産業並みとする」「車両の更新期間5年」「一般的な利潤(自己資本金の10%)を確保する」などの前提の上で、小規模な運送会社であっても法令を遵守しながら持続的に事業を行なっていけるだけの運賃を参考として示したものだ。
その結果、2022年末の時点で標準的な運賃の届け出率は52%まで上がったという。その意味では、ドライバーの労働条件の改善や健全な経営を確保する上で「標準的な運賃」が一定の役割を果たしていることは間違いない。
ただ、燃料サーチャージの設定や収受については標準的な運賃の「解釈通達」においてのみ位置づけられていた。いっぽう、ウクライナでの戦争の影響でエネルギー価格が高騰し、燃料費の上昇を踏まえた価格転嫁が可能となるような環境整備も求められていた。
こうした背景から国交省は2023年3月1日に、燃料サーチャージの算出方法等を(従来の解釈通達に替わって)新たに告示として定めることとした。
すなわち、燃料サーチャージの設定・収受は標準的な運賃の一部であることを明示した形で、簡単に言えば「燃料価格の高騰分を運賃に含め、荷主への価格転嫁を進めなさい」ということだ。
とはいえ、実際の価格交渉を行なうのは運送事業者だ。交渉の障壁となっている「荷主の理解」を解消するためには、新たな告示について運送会社だけでなく、荷主企業や一般消費者も含めて関係者に広く周知・浸透を図る必要がある。
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