「ユーロ7」との連携不足も……
ACEAの試算によると、2030年にHDVのCO2を45%削減するためには、それまでに40万台以上のゼロ・エミッション(ZEV)大型トラックが欧州の道路上を走っていなければならない。
そのためには年間10万台のZEVトラックが新車登録される必要があり、その運行を支える充電施設は今後7年以内に5万か所を整備しなければならない。その内3万5000か所はハイパフォーマンス充電(メガワット級の大型車用急速充電)に対応し、加えて、700か所の水素充填ステーションも求められる。
さらに、ZEVトラックの車両価格がディーゼル車より相応に高くなるのは不可避であるため、運送事業者はより効率的に、より利益率の高い方法でトラックを運用する必要がある。
「そうでなければ運送事業者はZEV車両を買うこともできなくなります。そうなればCO2削減目標の達成は不可能です。
最終的にバッテリー電気になるにしろ、燃料電池や水素エンジンのトラックになるにしろ、それはソリューションの一つにすぎません。この業界において移行を成功させるためには、今すぐに一貫性のある総合的な政策が必要です」。(ルンドシュテット氏)
また、ACEAは数か月前に提案されたばかりの「ユーロ7」排ガス基準との連携不足に対しても警鐘を鳴らしている。
ユーロ7はNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)など、主に内燃機関の排出ガスに関する規制だ。大型車にとってはその基準値達成が厳しすぎるため、事実上の「内燃機関禁止」なのではないかという懸念が出ている。
ACEAが指摘するのは、今回提案されたCO2削減のための投資とユーロ7への対応は矛盾なく行なわれるべきで、同規制により環境ニュートラルへの移行から注意をそらすべきではないということだ。これはユーロ7への批判であり、ルンドシュテット氏は次のように主張している。
「世界の他の地域はインセンティブによりモビリティのゼロエミッションを実現しようとしています。しかしながら欧州は、その『手段』を規制しようとしています。これは、(CO2の削減基準と)調和のとれた方法で行なわれていません」。
バイオ燃料などと組み合わせることで、内燃機関によってもCO2排出量を大幅に低減することは可能だ。従ってユーロ7で内燃機関という「手段」を排除するべきではなく、委員会の提案した排ガス基準とCO2削減目標には一貫性が無いという指摘だ。
CO2排出基準と排ガス規制は欧州のゼロエミッション移行に向けた計画の両輪とされるが、商用車メーカーとしてはCO2の90%削減にも「準備ができている」とするいっぽう、排ガス基準強化への対応は難しいと考えている内情が伺える。
今後強化されるであろう我が国の規制が、現実的かつ合理的であることを望むばかりだ。
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