ボルボ・トラックスは液化バイオガスを燃料として使用可能なLNGトラックを刷新し、新たに500hpエンジン搭載モデルをラインナップした。
エネルギー価格の高騰と「ロシア依存」からの脱却を目指すEUはバイオガスの生産を10倍に増やす計画で、米国でも生産量が急増するなど、世界的にバイオガスが脚光を浴びている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真・グラフ/AB Volvo・U.S. Energy Information Administration
バイオガスで長距離輸送のCO2を削減する
世界的にエネルギー価格が高騰し、急激なインフレが進むなかでも輸送の脱炭素化は不可避だ。そうした環境のもと、水素でも電動化でもない第3の選択肢がトラック輸送に影響を与え始めている。
2021年2月1日、スウェーデンのボルボ・トラックスは液化バイオガス(バイオLNG)を燃料として使用可能な、天然ガスエンジンを搭載するトラックを欧州でローンチした。
ボルボの新型天然ガストラックは、従来比で燃費効率を4%向上するとともに、新たに500hpエンジンを設定。さらに燃料タンクの容量を10%拡大し、従来は難しかった重量物輸送や長距離輸送のCO2排出量の大幅削減が可能となった。
バイオ燃料の一種であるバイオガスは下水汚泥や生ごみの発酵などにより生じるメタンガスを回収したもので、生物の活動に由来するため枯渇することのない再生可能資源だ。このバイオガスを低温で液化したものがバイオLNGとなる。
バイオマス燃料全般にいえることだが、バイオLNGも燃焼すればCO2を排出する。ただ、そのCO2はもともと植物が吸収(固定)した炭素であるため、差し引きするとCO2の排出量はゼロとみなせる。したがって、バイオLNGのみを燃料とした場合、化石燃料と比較して最大で100%のCO2削減が可能とされる。
ボルボ・トラックスが天然ガストラックを発売し、バイオガスによるCO2削減を謳い始めたのは5年前のことだ。今回のモデルチェンジに際して、ボルボ・トラックスで天然ガストラックを担当するダニエル・バーグストランド氏は次のように話している。
「バイオガスは輸送の電動化を補うために理想的な燃料です。運送会社の持続可能性目標と、環境にとってニュートラルな輸送を実現するという目的を、バイオガスによって補助することができます」。
天然ガスエンジンを搭載したボルボのFHおよびFMトラックは、従来の420hp及び460hpに加えて、新たに500hpモデルが設定された。4%の燃費向上はエンジン本体の改良等によるもの。燃料タンクの増量とあわせてより長距離の輸送が可能となった。
「私たちの天然ガストラックのパフォーマンスはディーゼル車と同等で、燃料の補充にかかる時間もディーゼル車とほぼ同じです。欧州ではLNG及びバイオLNGステーションが約600か所整備されており、長距離輸送に非常に適しています」。(同氏)
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