中型エンジンの自社開発はもう終わり!? ダイムラートラックが内燃機関メーカーと提携

中型エンジンの自社開発はもう終わり!? ダイムラートラックが内燃機関メーカーと提携

 ドイツの老舗エンジンメーカー・ドイツ社は、ダイムラートラックと中・大型エンジンで提携すると発表した。電動化などに注力するダイムラーは、トラック・バス用を含めて中型エンジンのIPを手放すことになり、今後、必要なエンジンは外部から調達する。また、取引の一環としてダイムラーがドイツ社に出資する。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/DEUTZ AG・Daimler Truck AG

ダイムラーとドイツ社が提携

中型エンジンの自社開発はもう終わり!? ダイムラートラックが内燃機関メーカーと提携
中・大型エンジンでドイツ社とダイムラーが提携。左はダイムラーのアンドレアス・ゴルバッハ博士、右はドイツ社のセバスティアン・C・シュルテ博士

 2023年1月30日、ドイツのケルン市に本拠を置くエンジンメーカー・ドイツ(Deutz AG、国名との混同を避けるため、以下「ドイツ社」と表記)は、内燃機関ビジネスを拡大するために重要な一歩を踏み出し、中・大型ディーゼルエンジンでダイムラートラック(Daimler Truck AG)と提携すると発表した。

 これによりドイツ社はダイムラーの建機・農機用エンジンの他、トラック・バス用エンジンの一部を含む最新技術へのアクセスが認められる。

 4ストローク内燃機関を発明したニコラウス・オットーが創業したドイツ社は世界最古の内燃機関メーカーとされる。いっぽう、シュツットガルトを本拠とするダイムラートラックは世界最大手のトラックメーカー(グループ)だ。

(余談となるがダイムラーの創業者で、後に「自動車」を発明するゴットリープ・ダイムラーはドイツ社のエンジン技術者であった)

 これまで日本や欧州のトラックメーカーは、自社でのエンジン開発を行なう傾向にあったが、欧州の次期排ガス規制「ユーロ7」が大型ディーゼル車に非常に厳しい内容となっていることもあり、ダイムラーとしては開発リソースを電動化などに集中させる狙いがある。

 対象となるのは排気量5~8L級の中型エンジン(MDEG, Medium Duty Engine Generation)と、同10~16L級の大型エンジン(HDEP, Heavy Duty Engine Platform)だ。

 ダイムラートラックのディーゼルエンジンはトラック・バスなどの大型商用車のほか、建設機械や農業機械などにも使われている。

 今回の取引は、大型エンジンに関してはオフ・ハイウェイ系(つまり建機や農機など)が対象となるいっぽう、中型エンジンにはオン・ハイウェイ系(つまりトラック・バスなど)も含まれる。

 ダイムラーは2021年にアメリカのエンジンメーカー・カミンズとグローバルに戦略提携することで合意しており、ユーロ7対応の中型エンジンは同社が製造する予定となっている。この提携の一環として、カミンズはマンハイム(ドイツ)にあるメルセデス・ベンツ工場内で、既存の設備を活用してエンジンを製造する。

 これにより工場の雇用が維持されるいっぽう、カミンズによる生産開始に伴い、ダイムラーの中型エンジンは生産終了となる。

 今回のドイツ社との提携は、その中型エンジンに関するIP(知的財産権)をドイツ社に売却したという形だ。ただし、ダイムラーにとっても主力であるトラック用大型エンジンは、(当面の間は?)自社開発を続ける。

 ちなみにダイムラーは都市バスなどでもユーロ7対応を行なわないことを表明しており、「どこに資金を投入すべきか見極める必要がある」として他社にもユーロ7をスキップするよう呼び掛けている。

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