中・大型エンジンのライセンス
いっぽうドイツ社は、これにより新しい顧客グループを獲得するほか、最新技術へアクセス可能となったことで開発コストを抑えることができる。また近代的な内燃機関のラインナップ拡充を通して、同分野でビジネスを拡大する基礎を築く。
この提携は次のような内容で、中型エンジンと大型エンジンの2分野にフォーカスしたものだが、ダイムラーがドイツ社に出資する形の資本提携も行なう。
1.ドイツ社はダイムラートラックのオン・ハイウェイ系(=トラック用)の中型エンジン(MDEG)に関するIPを獲得し、その開発を引き継ぐ。これにはオフ・ハイウェイ系のアプリケーション、つまり農業機械や建設機械用のエンジンも含まれている
2.ドイツ社はダイムラートラックのオフ・ハイウェイ系の大型エンジン(HDEP)のライセンスを獲得し、これをベースにしたエンジン開発を行なう権利を有する。また、これを独自に販売することができる
提携により両社は製造上の様々なアレンジメントが可能となるが、大型エンジンは引き続きダイムラートラック傘下のメルセデス・ベンツ工場(マンハイム)で製造され、ドイツ社に出荷したうえで同社が組み立てを行なう予定。
いっぽう中型エンジンは完全にドイツ社での製造となる。また同機をベースとしたエンジンは、2028年以降「DEUTZ」ブランドで製造される予定だ。
ドイツ社は内燃機関ビジネスを拡大
ドイツ社にとってこの提携は、最近表明した「デュアル+」戦略の最初の一歩となる。すなわち環境へのインパクトが中立な商品ポートフォリオを開発するだけでなく、従来型エンジンの最適化と更なる開発を続けるというものだ。
ドイツ社のCEOを務めるセバスティアン・C・シュルテ博士は次のように話している。
「ダイムラートラックとの提携は、統合が進む内燃機関市場において、私たちの当初の地位を大きく改善します。ダイムラーの先進的なエンジン技術へのアクセスが可能になったことで、新たな分野でお客様を獲得することができると考えています。
大型車や農業機械は、依然として内燃エンジンに基づく従来型のパワートレーンを必要としており、それを合成燃料で運行するなど、より環境への負荷を小さくする方法が求められているのです。
今後数年間、私たちは環境ニュートラルな製品の開発を進めるいっぽうで、従来型のエンジンビジネスをさらに拡大して参ります」。
新戦略のもと、ドイツ社は1月中旬に「グリーン」商品への投資を行なうとともに、独立系エンジンメーカーとして「恒久的に世界トップ3の座を維持する」と発表している。そのためには買収や提携といった手段も排除しないとした。
「100年に1度」といわれる変革の時代にあって、自動車メーカーが電動化に注力しているため、内燃エンジン市場では統合が進んでいる。そうした市場環境の中で、老舗エンジンメーカーとしてドイツ社が積極的な役割を果たそうとしている。
いっぽう、ダイムラートラックの執行役員でトラック技術を担当するアンドレアス・ゴルバッハ博士は次のように話した。
「ドイツ社は内燃機関の専門企業として確固たる地位にあり、同社とのパートナーシップを喜んでいます。
私たちは昨年、輸送分野への注力と地域レベルでのカーボンニュートラルという戦略に合わせて、『ユーロ7』排ガス基準への適合を目指す中型エンジンに対して、自社単独での開発投資を行なわないことを決定しています」。
今回の取引は、中型エンジンに関するものと、大型エンジンに関するものの2つに分かれているが、二つを合わせた取引規模は、金額にすると数千万ユーロとみられる。
ドイツ社はキャッシュで大型エンジンのライセンスを獲得するいっぽう、オン・ハイウェイ系を含む中型エンジンに関しては、ダイムラートラックがドイツ社の増資を引き受ける形となる。これによりダイムラートラックはドイツ社の発行済み株式の4.19%に当たる約528.5万株を保有する主要株主となる予定だ。なお取引の完了には当局の承認が必要となる。
【画像ギャラリー】誕生から1世紀! 1923年に登場したベンツの「ディーゼルトラック」を画像でチェック!!(7枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方