あまりにも時期尚早だったあのクルマのリベンジか!? BMWが水素エンジントラックの研究プロジェクトを主導

BMW「ハイドロジェン7」という経験

 BMWは自動車メーカーだがトラックを製造しているわけではないので、このプロジェクトでは業務でトラックを使用するエンドユーザーの立場だ。BMWの工場への輸送を通して、今後、水素トラックを大規模に導入するために鍵となる要件を探る。

 また、BMWはコンソーシアムのリーダーであり、水素エンジンのパイオニアでもある。同社はかつて「ハイドロジェン7」(2006年発表)で水素エンジンの乗用車に挑み、そしてギブアップした経験を持つ。

あまりにも時期尚早だったあのクルマのリベンジか!? BMWが水素エンジントラックの研究プロジェクトを主導
2006年発表のBMW「ハイドロジェン7」。世界初の量産型ラグジュアリー水素サルーンを謳い、日本市場にも2007年に導入された

プロジェクトを評価する枠組みもBMWが用意し、ライプツィヒ工場の輸送に18トントラックを先行して展開、ほかのトラック用代替ドライブトレーンと比較することで、水素エンジンの実際の利点・欠点を明らかにする予定となっている。

 ハイドロジェン7のリベンジというわけではないだろうが、BMWの生産ネットワーク・サプライチェーン管理担当上級副社長のミカエル・ニコライデス氏は次のように意気込んでいる。

 「この国際プロジェクトのリーダーとして、BMWグループは先進的なスピリット見せるだけでなく、あらゆる事業領域における持続可能性について、どのように考えるべきなのか理解しなければなりません。

 これには早い段階で技術を評価することや、製品とインフラを新しい要件に適応させることも含まれています」。

専門知識を結集したコンソーシアム

 コンソーシアムには様々な分野の専門知識が結集している。

 エンジン開発のパイオニアとして世界をリードしてきたドイツ社はパワートレーンの専門企業であり、すでに7.8Lの水素エンジンの開発に成功している。

 このエンジンは最初のアプリケーションである定置式発電機として正常に動いているようだ。HyCETプロジェクトでは、同じエンジンを18トントラックに搭載し、輸送用途での実用性を証明する。

 いっぽう水素の専門企業であるケヨウは、革新的な水素技術を開発している。そのコンポーネントと燃焼プロセスは、コストに優れた方法で従来のディーゼルエンジンを水素燃焼エンジンへとコンバートするために使われている。

(大型ディーゼルエンジンは高い内圧に耐えるように設計されているため、そのまま水素エンジンに流用可能)

 ケヨウはHyCETプロジェクトの一環としてボルボ・グループと共同で排気量13Lの水素エンジンを開発中だ。ボルボはこのエンジンと水素タンクを搭載した(連結)総重量40トン級のトラックを開発する。

 そしてこのトラックを、DHLフレートがBMWグループの物流に使用するというのがプロジェクトの枠組みとなる。

 DHLフレートは世界的な輸送プロバイダ・DHLの欧州圏の陸上輸送を担当する部門で、実際にトラックを使用するユーザーの視点で開発に貢献するほか、BMWグループの輸送パートナーとして、ライプツィヒ工場のシャトル輸送を通して開発車両の試験を行なう。

 また、国際石油資本(いわゆるスーパーメジャー)であるトタルエナジーズは、間接的な物も含めるとドイツ、ベルギー、フランス、ルクセンブルクで2030年までに150箇所の水素ステーションを運営する計画を持っている。

 トタルはHyCETプロジェクトの下で2か所の水素ステーションを新設する。場所はライプツィヒとニュルンベルクで、両ステーションとも将来的に(プロジェクト終了後も)欧州の長距離輸送用の水素ネットワークの一部に組み込まれる予定。

 これらの専門企業がドイツ政府の資金提供を受けて、水素エンジンによる持続可能な輸送の可能性について実証するのがプロジェクトの最終目標だ。

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