最低気温マイナス89.2℃!! 日本の極地研究を支える車両と人々【もう一つの南極物語〜働くクルマ編〜】

■観測活動に欠かせない装軌車

 いっぽうの装軌車は、やはり雪上車が中心だ。雪上車が無ければ南極観測が成り立たないといっても過言ではないほど重要な存在である。中でもエース的な存在が大原鉄工所社製の大型雪上車、SM100Sである。

 走っても走っても景色がまったく変わらない白一色の大雪原を、数カ月にわたって踏破する調査旅行に使用されるSM100Sは、車両重量11.5t、最大積載量1tで、車両寸法は長さ6910mm、幅3730mm、高さ3240mmだ。

 最高速度21km/h、運用最低温度マイナス60℃、最大燃費4.4km/L、登坂能力30度、最小旋回半径11.0mで、220kWのコマツSA6D125型エンジンを搭載。ワイヤーで締結した2t積木製そりを最大7台牽引でき、各種燃料や機材を運ぶことができる。

 車内には、運転席を含め4座席と2名分のベッドがあり、炊事も可能である。後部車室片壁面には、観測・通信機器収納ラックと定格出力3kVAの発電機を備え、100V電源の供給が可能だ。さらに航法装置としてレーダーとGPSが搭載できる。低温での始動性をよくするため機関暖房装置(プレウォーマー)も装備されている。

 調査旅行では、通常5~8km/h程度の速度で走行。南極にはサスツルギと呼ばれる風によってできた雪面の凸凹が至るところにあるため、それほど速く走ることはできない。またクレバスもあり危険なため、必ず2台以上で行動することになっている。

SM100S雪上車。数カ月にわたる調査旅行にも使用される大型雪上車だ

 このほか大型雪上車には、第55次隊から導入された車両重量12tのPB300(ピステンブーリー)がある。これはドイツのケースボーラー社製で、スキー場のゲレンデ整備用の雪上車を南極用に特別に改造したもの。

 SM100Sに比べて大きな牽引力を有するため、将来の内陸基地建設に必要な大量の物資を大陸沿岸から予定地までの輸送に使用するほか、キャビン後方に架装されたローダークレーンによる荷役作業や前部の排雪ブレードによって除雪・整地を行なうなど多目的用途の雪上車として導入されている。

 また中型雪上車のSM60/65Sは、車両重量6.7t、最大積載量1.3tで、123kWのいすゞ6BG1型エンジンを搭載。12ftコンテナを搭載できる専用そりによる海氷上輸送、さらにS16と呼ばれる昭和基地から約30km離れた南極の内陸旅行の中継基地への物資輸送に使用する目的で開発された雪上車である。

 車両前方にブレードが装備されているが、ブルドーザ並みとはいかず、車両の回りや小さな起伏の均しなど積雪を薄く除雪するためのもの。また、後部の荷台にはタダノのカーゴクレーンが架装され、荷役に用いられる。

 車室は耐寒構造ではないため(最低運用温度マイナス30℃)、大陸での運用はS16付近が限度とされる。ちなみに中継基地のS16には、SM100Sやそりなどが残置されており、ドームふじ基地などへの内陸旅行にはこれらが当たることになっている。

 小型雪上車のSM40Sは2タイプがあり、変速機がマニュアルのSM414は車両重量4.2t、油圧式無段変速のSM415は4.5tで、前部車室には運転席を含め2名分の座席があり、後部車室には6名分のロングシートがある。基地周辺および沿岸・大陸周縁部で運用する雪上車だ。

 小型雪上車にはもう1タイプ、車両重量2.5tの浮上型雪上車SM30Sがある。主に海氷上での運用を目的として設計・製造された雪上車で、車体は軽量で海水面での浮上性を有しているが、もちろん水陸両用車というわけではなく、氷が割れて万一海面に落ちても、車内に侵入した海水を排出し、2時間程度は浮いていられるという特徴を持っている。

 5月5日公開記事【もう一つの南極物語~生活編~】へつづく。

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