水素エネルギーがトラックの未来を変える!! トヨタとダイムラー提携の真の狙いとは?

大型車用ヘヴィデューティーFCをボルボ合弁で開発するダイムラー

ダイムラーで開発中の大型FCセミトラクタ・メルセデス・ベンツGenH2。非常に高度なFCパワートレイン制御技術も搭載している
ダイムラーで開発中の大型FCセミトラクタ・メルセデス・ベンツGenH2。非常に高度なFCパワートレイン制御技術も搭載している

 一方のダイムラーは2021年、大型トラック用ヘヴィデューティーFCの開発・生産子会社(かつてはメルセデス・ベンツの乗用車用FCを開発・生産していた)を、最大のライバルであるボルボ・トラックスとの合弁企業・セルセントリック社へ改組している。

 その狙いは、技術的ハードルの高いヘヴィデューティーFCモジュールの開発および生産・調達を、欧州トラック市場シェアで1位と2位のダイムラーとボルボが折半し、かつ両社がその製品を調達することで、優れた性能とコスト競争力を得るものだ。

 恐らく史上初となるセルセントリックのヘヴィデューティーFCモジュールは、直流800V・出力150kWという性能を備えるとともに、これまでディーゼルエンジンが収まっていたキャブ下のコンパートメントへ、容易に搭載できるよう設計されている。

 2022年には、このヘヴィデューティーFCモジュール2基を搭載するダイムラーの前述GenH2トラックと、ボルボのプロトタイプ大型FCトラック(FHフューエルセル・エレクトリック)がそれぞれ公開されている。これらは共通のFCモジュールを用いてはいるが、FCVとしてはまったく個別に開発されており、走行試験もそれぞれで行なわれている。

協業でトラック用FCフルラインナップが実現する

トヨタと日野が共同開発したトヨタ・ダイナ(日野・デュトロのトヨタブランド車)をベースとする小型FCトラック実証試験車
トヨタと日野が共同開発したトヨタ・ダイナ(日野・デュトロのトヨタブランド車)をベースとする小型FCトラック実証試験車

 そのダイムラーは、昨秋発表した大型レンジエクステンダーEV路線バス(航続距離延伸型EV、メルセデス・ベンツ・eシターロ・フューエルセル)には、トヨタ製FCモジュールを採用している。セルセントリック製FCは「バスには大きい」(ダイムラーのマーティン・ダウムCEO)からだ。

 トヨタ・ダイムラー協業におけるセルセントリックの扱いは定かではないものの、小型~大型まで対応できるFCモジュールの開発・生産をトヨタが担当し、それよりも高出力・高耐久のヘヴィデューティーFCモジュールはセルセントリックから調達する……というのは、リアリティのあるシナリオだと思う。

 なぜなら、小型~大型トラック・バスを展開する日野と三菱ふそう、中型~大型トラック・バスを展開するダイムラーが、それぞれラインナップしている車格・モデルにマッチしたFCモジュールを入手できるようになり、また、トヨタとセルセントリックのFCモジュール需要がそれぞれ拡大することで、コスト競争力のアップも期待できるからである。

 そして前述したように、FCVのパイオニアたるトヨタ、ダイムラーでさえ、乗用車や路線バスとは運転条件が大幅に異なるトラック用FCモジュールとその制御については、いま現在も知見とノウハウを積み上げている段階である。これも協業を通じて共有していくのであれば、双方にとって極めて大きな、技術上の優位性が得られると考えられるのだ。

三菱ふそうが2019年に発表したコンセプト小型FCトラック・eキャンターF-CELL
三菱ふそうが2019年に発表したコンセプト小型FCトラック・eキャンターF-CELL
【画像ギャラリー】世界の最先端を走るトヨタとダイムラーの燃料電池技術をチェック!(11枚)画像ギャラリー

最新号

ナニワの海コンお姉さんが赤裸々に描く問題作!! 君知るや女子の気苦労

ナニワの海コンお姉さんが赤裸々に描く問題作!! 君知るや女子の気苦労

ナニワの海コンお姉さんを自称するゆでさん。今では 同じ海コン仲間の男性ドライバーと、時には丁々発止と渡り合い、時には和気あいあいと語り合う立派な海コンドライバーに……。そんなゆでさんにも人知れず嘆かざるを得ない女子の気苦労がありました。