日本初となる、水素を用いた燃料電池大型トラック(大型FCトラック)の走行実証が、5月17日からスタートした。国内物流大手のヤマト運輸、西濃運輸、飲料大手のアサヒグループが幹線輸送に投入する。実証車はいずれも、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した大型FCトラック。その注目のクルマに迫った。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部、ヤマト運輸、トヨタ自動車
プロフィアベースでリア2軸電気駆動
燃料電池車(FCV)は、水素を燃料電池(FC)で電気分解し、そこで得た電力で直接、あるいは高電圧バッテリーに貯めてモーターを駆動するという、電気自動車の一種である。燃料となる水素があれば発電できるため、バッテリーEVよりも航続距離を確保しやすく、トラックのゼロエミッション化に適しているといわれている。
実証車の大型FCトラックは、日野の「プロフィアFR」をベースに、燃料電池モジュール(FCモジュール)、水素タンク、高電圧バッテリー、電動ドライブアクスル(eアクスル)を搭載する。車両総重量(GVW)25トンで車両サイズもほぼ同じである。
プロフィアFRは本来、前1軸・後2軸のうち後前軸のみ駆動する6×2駆動車型だが、大型FCトラックは後2軸ともeアクスルを装着するため6×4駆動である。また、eアクスルはモーターと駆動軸が一体なので、シャシー下のプロペラシャフトがないのも特徴だ。
大型トラック用のFCスタック
開発関係者によると、FCスタックはトヨタのFC乗用車「MIRAI」と基本的に共通だが、時速80km定速で走行を維持する大型トラック幹線輸送特有の運行条件に対応すべく、定格出力を引き上げるとともに、電力を発生する燃料電池セルの耐久性確保のため、電力制御についても変更したという。
高電圧バッテリーはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池で、2つのeアクスルを前後から挟む形で、2基のバッテリーパックをシャシーフレームに吊下搭載する。慣性質量が大きい大型トラックは、走行に大きな出力が必要となる一方、下り坂や減速時の回生で得られる電力も大きいため、出力密度の高いバッテリーを採用している。
水素タンクは、70メガパスカル(約700気圧)という圧力で気体の水素燃料を貯蔵するもので、キャブバックに2本、シャシーフレームのホイールベース間に左右2本ずつ(4本)の計6本を搭載している。水素の充填は、満タンまで30分ほどかかるが、航続距離は約600kmに達する。
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