日本でも燃料電池トラックの開発競争が繰り広げられているが、その一番手を走っていると目されているのが三菱ふそうトラック・バスだ。
三菱ふそうは2019年の東京モーターショーで水素燃料電池小型トラック「Vision F-CELL」を公開し、翌20年に同機体の内外装に小変更を加えたコンセプトモデル「eキャンター F-CELL」を発表。
2020年代後半までに燃料電池トラックの量産を開始するという三菱ふそうの先兵「eキャンター F-CELL」の実力はどんなものだろう? 同社の川崎工場敷地内で試乗する機会を得たので、そのファーストインプレッションをお届けしよう。
文/多賀まりお 写真/フルロード編集部
*2020年9月発売トラックマガジン「フルロード」第38号より
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■量産型小型BEVトラック「eキャンター」をベースに開発
試乗したF-CELLは、三菱ふそうが2017年にリース販売を開始した量産型BEV小型トラック「eキャンター」をベースに開発した車両で、同車のシャシー・パワートレインにRe-Fire社製の燃料電池ユニットと水素の貯蔵~供給システムを組み合わせたもの。
確立されたコンポーネント同士のカップリングだけに短期間で製作できたという。
具体的には最高出力135kWの走行用モーターと出力制御用インバータは「eキャンター」と共用。容量13.8kWhのリチウムイオンバッテリーパックは「eキャンター」の6基から1基に減らし、サイドレール間のエンジンコンパートメント後方に搭載されている。
電動化されたパワーステアリングポンプやブレーキブースターも搭載する位置は異なるが機器は共用だ。
いっぽうエネルギー容量40kWhのフューエルセル(FC)スタック(燃料電池本体)のほか、70MPa級の高圧水素ボンベや水素供給の制御機器はRe-Fireが担当。
FCスタックはエンジンコンパートメント部に、3本のボンベとFCの冷却器(バッテリーパックの冷却系よりも温度帯が高いので別系統。冷間始動はマイナス20度まで可能だがバッテリーとともに燃料電池ユニットのプレヒートを行なう)は前後輪間のサイドレール左右に配置されている。
「eキャンター」は機器搭載用スペースに比較的余裕があるワイドキャブ(フレーム組幅750mm)のホイールベース3400mm(E尺)車型だが、同車の床下はサイドレール内側を含めて補機で埋まっている。
ただし車両重量は大量のバッテリーを積む「eキャンター」より軽く、最大積載量は同じGVW7.5t級のキャンターのディーゼル車と同等を目標値としている。