「東京モーターショー」出展車との違いは?
リー・オートといえば、2019年の東京モーターショーに日野自動車が出展したコンセプトモデル「フラットフォーマー」を日野と共同開発したメーカーで、インホイールモーターと小径タイヤによるフラットなシャシーを覚えている人も多いだろう。
フラットフォーマーは電動化によるフラットなプラットフォームにシャシー上面のマウントを介して様々なボディ(荷台)を搭載する自動運転トラックという、提案性の高い車両だった。
TMSの出展車は全長4700mm×全幅1700mmと日本の小型車枠に収められ、前輪をインホールモーター化したほか、小径の後2軸も駆動する6輪駆動車だ。前輪はコイルスプリング(サスペンション)と転舵用モーター(ステアリング)をホイール内に収めるいっぽう、後軸は左右に配したモーターの駆動力をタンデムに配分する機構と独立懸架サスペンションを備えていた。
タイヤも衝撃吸収機構を備えるエアレスタイプで、コンセプトモデルらしい先進的な内容だった。
いっぽう、市販されるP7-Cは中型トラッククラスで、米国のトラック区分では「クラス4」(車両総重量14001~16000ポンド=約6.4~7.3トン)となる。P7プラットフォームの最大寸法は、全長が8.7メートル、全幅は2.4メートルだ。キャブを備えるので人間が運転することもできる。
最大の特徴は、ステアリング機構、ブレーキ、サスペンション、モーター(パワートレーン)、制御系をコンパクトなモジュールにまとめた「リー・コーナー」を採用したこと。
TMS出展車のようなインホイールモーターではないが、このモジュールをシャシーとホイール間(ほぼタイヤハウジング内)に収め、4輪それぞれに配置する。
これらが4輪駆動・4輪操舵のモジュラー式EVプラットフォームを構成しており、クラス1~6のトラックに対応するが、「P7」系はクラス3~5の中型トラック用であり、先述の通り型式を取得したのはクラス4となるようだ。また、4輪操舵により最小回転半径は6.0メートルと、中型トラックとしては極めて小さい。
リー・コーナーは1基当たりのピーク出力が100kWとなり、4基で400kW(540hp)に達する。126kWhのバッテリー(オプションで168kWh)により航続距離は200マイル(322km)とのこと。
トラックの全てをバイワイヤ化することの優位性
リー・オートはプレスリリースの中で商用車をバイワイヤ化する利点として、次のような点を挙げている。
●優れた操作性と積載効率
●ハードウェア/ソフトウェアの冗長設計による安全性の向上
●ステップの高さやドライバー中心のキャブなどエルゴノミクスの改善
●保守性の向上
●保管が必要なスペアパーツを削減しメンテナンス効率を向上
●自動運転への準備とOTA(無線)アップデート
●モジュラー設計が可能となり迅速な市場投入ができる
●エネルギー効率の最適化
リー・オートの共同創業者でCEOのダニエル・バレル氏は次のようにコメントしている。
「弊社の『リー・コーナー』は真のゲームチェンジャーになると確信しています。これにより私たちは運送会社が欲している電動トラックを、そしてドライバーが運転したいと思えるトラックを作ることができます。弊社のクルマには強い需要があるでしょう。
自動車業界で初めて完全なバイワイヤ化を果たした車両を完成させた開発チームを非常に誇りに思っています。お客様は車両が届くのを待ち望んでいますが、最初のデモトラックをディーラーへ輸送中です。お客様はもうすぐこれを評価することができます」。
また、政府・規制対応を担当する副社長のリチャード・コリー氏のコメントは次の通りだ。
「今回、マイルストーンを達成できたことは、この技術を安全に市場投入するという決意の証となります。連邦政府と各州のインセンティブはトラックの電動化を加速し、大気汚染の軽減と野心的な気候目標の達成に貢献します」。
【画像ギャラリー】史上初の「完全バイワイヤ」トラック!? リー・オートモーティブのP7プラットフォームを画像でチェック!(15枚)画像ギャラリー
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