大型トラックの脱炭素化ではエンジン技術が重要? ボルボとウェストポートが内燃機関の合弁会社設立へ!

大型車のCO2削減には内燃機関も重要

大型トラックの脱炭素化ではエンジン技術が重要? ボルボとウェストポートが内燃機関の合弁会社設立へ!
HPDIを採用する大型エンジン。脱炭素を実現する手段は電動化だけではない(IAA2022より)

 ボルボは商品とソリューション、サービスにおいて2040年までに温室効果ガスの排出量をネットでゼロにするという目標を掲げている。

 そのための商用車駆動システムの需要は一つだけではないというのがボルボの考え方で、顧客や環境が求める様々なアプリケーションが必要となる。ボルボが提唱しているのは、バッテリー電気、燃料電池、脱炭素の内燃エンジンという3つだ。

 電動化を進める中、内燃機関への投資を検討するという今回の発表も同じ文脈と思われる。

 なお、自動車の「排出」には走行時の排出を表す「TTW」(タンク・トゥ・ホイール)と、エネルギーの製造工程も含めた全体の排出量を意味する「WTW」(ウェル・トゥ・ホイール)がある。

 BEVやFCEVは局所的にはCO2を排出しないのでTTWではゼロエミッションだが、現状では発電や水素の製造においてCO2を排出するためWTWでの排出量をゼロにできない。またバッテリーの製造はCO2を多く排出するため、製造時の排出を考慮したライフサイクルにおけるWTWでは排出量が多くなる。

 いっぽう100%バイオ燃料を使った天然ガスエンジンは、局所的にCO2を排出するためTTWではゼロエミッションではないが、再生可能燃料を使うためWTWでの排出をゼロにすることができ、全体としてのCO2削減効果が高い。

 水素を燃焼する水素エンジンは、わずかにCO2を排出する(ウェストポートによるとディーゼル車の3%ほど)ものの、車両製造に係る排出量の差などで、同じ燃料を使用するFCEVよりライフサイクルでのWTW排出量は少なくなる。

 大気汚染の抑制にはTTWの排出削減も重要だが、地球規模でのCO2削減は車両のライフサイクルを考慮したWTWで考える必要があり、「エンジン+再生可能燃料」はそのための効果的な組み合わせとなっている。

 ボルボの最高技術責任者を務めるラース・ステンクヴィスト氏は次のようにコメントしている。

 「持続可能なソリューションにおいて、内燃機関を再生可能燃料で動かし、脱炭素化することは重要です。ウェストポートのHPDIは既にボルボのトラックに搭載され5年以上の実績がある、証明された技術です。

 お客様はこの技術とLBG(液化バイオガス)を組み合わせることでCO2の排出を大幅に削減することができます。また、水素を燃料とする水素エンジンにも大きな可能性があります」。

 また、ウェストポートのCEO、デイビッド・ジョンソン氏は次のようにコメントした。

 「ウェストポートは脱炭素という差し迫った課題に対応しようとするお客様に、既存のインフラを活用可能な現実的なソリューションを提供しています。JVの設立は世界の脱炭素を加速することをコミットメントに掲げる両社にとって自然な流れであり、内燃エンジンの未来に向けて力強いサポートを得られたことを誇らしく思います。

 これによりHDPIの市場での地位はさらに高まり、CO2削減のために現実的な燃料システムを提供するという弊社のコミットメントをさらに強化します。水素などゼロカーボン燃料への移行も含め、HDPIは大幅な排出削減が難しい大型商用車やオフロード車両などのセクターで活躍するでしょう」。

 なお意向書への署名には法的拘束力がなく、JVの設立は正式に決定したものではない。今後、投資計画、供給、開発などの分野で交渉を行ない、これらの分野で合意に至った場合、2024年の前半にJVを設立する予定だ。

次ページは : そもそも「HPDIシステム」とは?

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