バッテリー電気自動車(BEV)や燃料電池電気自動車(FCEV)など、モビリティの脱炭素化は電動化が主流だ。ただ、長距離輸送用の大型車やオフロード車など一部の分野では電動化だけでは脱炭素の実現が困難とされる。
内燃機関(エンジン)技術を脱炭素の手段の一つに掲げるボルボは、代替燃料システム大手のウェストポートと合弁会社の設立に向けて意向書を交わした。同社の燃料システムはボルボの天然ガスエンジンで実績があるほか、水素を燃焼する水素エンジンなどゼロカーボン燃料についても模索する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo・Westport Fuel Systems・フルロード編集部
ウェストポートのHPDI技術でトラックメーカーの脱炭素を加速
スウェーデンに本社を置く世界的商用車メーカーのボルボグループと、カナダの代替燃料システム大手ウェストポート・フューエル・システムズは2023年7月19日、合弁会社(JV)の設立に向けて拘束力のない意向書に署名したことを発表した。
新たに設立するJVは長距離輸送用の大型トラックやオフロード車両用にウェストポートの「HPDI」燃料システムの商用化をグローバルに加速する。商用車の電動化が進展するなか、エンジン技術は脇役に追いやられた感もあるが、トラック分野で世界最大手の一角であるボルボは、内燃機関への投資を続ける意向のようだ。
ボルボとウェストポートは世界のトラック業界、エンジンメーカー、商用車メーカー、そして商用車のユーザーとなる運送会社と社会が脱炭素に向けた取り組みを加速するために、持続可能な輸送ソリューションを作り出すというビジョンを共有している。
ウェストポートのHPDI燃料システムは、電動化だけでは低炭素の実現が難しい長距離輸送やオフロードモビリティなどをサポートするためのハイパフォーマンスのソリューションで、事実上の「ディーゼルエンジン禁止」に近い内容となりそうな欧州の次期排ガス基準「ユーロ7」や、NOx基準値が大幅に強化されるとみられる米国の次期EPA規制など、非常に厳しい排ガス規制にこれらの車両においても対応することを可能にする。
こうした商用車のユーザーに、液化バイオガスやグリーン水素(再生可能エネルギーのみを使って作られた水素)、その他のリニューアブル燃料を使用する現実的な「ゼロカーボン」のオプションを提供する。
設立されればボルボはJVの主要な顧客となる見込みだが、JVの使命は、HPDI技術の商用化を加速することで、他のトラックメーカーやエンジンメーカーも顧客となる。
ウェストポートはHPDIに関する現在の資産(固定資産、知的財産権等を含む)をJVに移管し、ボルボは新会社に45%を出資する。金額にすると2800万ドル(約40億円)+新会社の業績に応じて追加で4500万ドル(約63億円)だ。
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