ボルボ・トラックスはこれまでバッテリーEV(BEV)トラックやバイオガスなど再生可能燃料を使ったゼロエミッション・トラックを提供してきたが、新たな選択肢となる燃料電池(FCEV)トラックを初めて公開した。
1000kmの航続距離など従来のディーゼル車と同等の性能と、CO2排出ゼロを両立するFCEVトラックを2020年代後半に商用化する計画だ。FCEVの中心的なコンポーネントとなる燃料電池は、ボルボとダイムラーの合弁企業が欧州で製造する。
水素の充填施設などのインフラ整備、再生可能エネルギーから作られた「グリーン水素」の供給など、環境が整うまではまだ時間がかかるが、長距離輸送や重量物輸送などの分野でFCEVトラックの可能性が拡がっている。
ただボルボ・トラックスは「トラックの未来はBEVか、FCEVか?」という賭けはしていない。輸送の脱炭素化という目的のために、それぞれの業務に適したオファーをポートフォリオに追加するという立場で、BEVとFCEV、バイオディーゼルなどはお互いに補い合う手段とした。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/AB Volvo
「第3の選択肢」としての燃料電池
水蒸気しか排出せず、車両で発電し、1000kmの航続距離を誇るトラック。水素燃料電池(FCEV)トラックによってこれが可能になる。スウェーデンのボルボ・トラックスは2022年6月20日、同社初のFCEVトラックを公開すると共に、この新技術による車両の試験を開始した。
輸送の脱炭素化に向けてボルボ・トラックスはこれまでに、バッテリーEV(BEV)トラックと、バイオガスなど再生可能燃料を使用可能なトラックを提供してきた。
CO2ニュートラルトラックの第3のオプションとして、水素を使ったFCEVトラックをポートフォリオに追加し、2020年代後半に市場に投入する。
ボルボ・トラックス社長のロジャー・アルム氏は次のように話している。
「私たちはこのテクノロジーを数年にわたり研究してきました。最初のFCEVトラックによる試験走行が成功裏に終わったことに感銘を受けています。BEVとFCEVの組み合わせにより、どのような業務であっても、お客様はトラックからのCO2排出を完全になくすことができます」。
FCEVトラックの航続距離はディーゼル車と同等の1000kmとなる。水素の充填にかかる時間は15分以下だ。積載量に関しては、北欧で普及する65トン以上の連結総重量も可能。
2台の燃料電池により、車両がオンボードで300kWの電気を発電するシステムとなっている。2025年以降の商用化を前に、顧客によるパイロットプログラムを数年以内にスタートする予定だ。
「水素をエネルギー源とする燃料電池トラックは、とりわけ長距離輸送や重量物輸送など多くのエネルギーを消費する輸送業務に適しています。また、バッテリーの充電施設が限られている地域などでも選択肢の一つとなります」。
(同氏)