バッテリーEVトラックはコスパ悪すぎ! CO2削減コストは「RD」の5.8倍でディーゼル車のほうがマシ!?

最終的な長距離輸送の「脱炭素コスト」は?

バッテリーEVトラックはコスパ悪すぎ! CO2削減コストは「RD」の5.8倍でディーゼル車のほうがマシ!?
15年で新車販売の全てをBEVとするには、毎年6.67%ポイントずつ販売比率を引き上げて行く必要がある。そのためのコストは膨大で、中小の運送会社に負担できるだろうか?

 ATRIは長距離輸送の脱炭素にかかるコストを算出するため、15年というタイムラインにおいて各シナリオを検証した。一つはBEVを推進するシナリオ、もう一つはRDの利用を拡大するシナリオだ。

 まず、米国のトラックを全て電気で走らせるには、国内の発電量を40.3%増やす必要がある。充電ステーションや送電網も整備しなければならない。BEV化により必要台数が増えるため駐車場の整備も必要だ。中・大型車のために1兆ドルのインフラ投資が必要となる。

 コストの内訳としては充電ステーションの整備が58%で最大、送電網の整備、発電力の強化などがこれに続く。

 大型トラックではBEVとICEの差額が約30万ドルで、米国内の年間の販売台数は25万台前後だ。15年で新車販売を全てBEVにするには毎年6.67%ずつBEVの比率を引き上げて行く必要があるが、大型トラックの車両寿命は一般に10年程度。このシナリオではICEの耐用年数が残るため、15年目には登録車両全体の61.5%がBEVとなる。

 15年目に登録車の全てをBEVトラックとするには、5年目以降の新車販売を全てBEVとする必要がある。2023年のBEV大型トラックの販売台数が441台だったことを考えると、このシナリオはコストの上でもタイムラインの上でも非現実的だ。

 15年目に登録台数の61.5%がBEVされるというシナリオでは、米国内の大型トラックによるCO2排出量は、ベースライン(全てがディーゼル車の場合)と比べて22.6%の削減に留まる。これはハイブリッド化や省燃費技術の向上でも実現可能な数値で、あまりにもコスパが悪すぎる。

 同等のCO2削減効果をICE-RDで得るには、年間のRD消費量が80億ガロンとなればよい。2023年のRD消費量が28.7億ガロンなので、消費量が毎年15.8%ずつ増えると仮定すると7年目に80億ガロンに到達する。すなわち、RDはBEVによるCO2削減を、より少ないコストで8年前倒しで実現する。

(ちなみに「毎年15.8%の増加」は控えめな数値で、2023年の米国のRD消費量は前年比で66.9%増えている)。

 BEVシナリオの場合、15年間のインフラと車両コストの合計は1兆1903億ドル(約185兆円)となった。

 ドロップイン燃料のRDの場合、従来のディーゼルエンジンと給油所などのインフラがそのまま使えるため、こうしたコストはかからない。ただし、RDの供給を増やすため設備投資が必要となる。ATRIは建設予定のRD製造施設の費用から、供給を1ガロン増やすのに必要なコストを3.70ドルと試算した。

 そして開発コストや価格調整のための負担額と合わせて、ICE-RDシナリオの15年間のコスト総額は2037.2億ドル(約32兆円)とした。BEVシナリオの約6分の1だ。レポートはこれらをまとめて次のように結論づけている。

・(環境への影響)原材料まで含めたライフサイクルで比較すると、BEVトラックはICE-RDトラックより多くのCO2を排出する
・(運行への影響)航続距離と積載量から、BEVトラックの仕事量はICEトラックと同じではなく、1台当たりの収益性が低下する。同じ仕事により多くのトラックが必要となり、BEV化による排出削減を相殺する
・(経済への影響)BEVトラックは車両コストとインフラコストが極めて高く、ICE-RDと比較して同じ効果を得るのに5.8倍の費用負担が生じる

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