首都圏で実証運行スタート! カーボンニュートラル幹線輸送を実現する「燃料電池大型トラック」はどのようなトラックなのか?

ディーゼル車と同じ使い勝手

ヤマト運輸の大型FCトラック実証車の室内。通常のプロフィアとほとんど同じであるが、メーターパネルの表示類が異なっている(写真提供:ヤマト運輸)
ヤマト運輸の大型FCトラック実証車の室内。通常のプロフィアとほとんど同じであるが、メーターパネルの表示類が異なっている(写真提供:ヤマト運輸)

 大型FCトラックは「ディーゼル車と同等の使い勝手も追求した」(開発関係者)とのことで、排気ブレーキ(エキブレ)のかわりに装備する回生ブレーキは、エキブレ同様コラムレバーで操作し、制動強さも同じく4段階から選べる。

 前述のとおり、eアクスル2軸の6×4駆動となる大型FCトラックだが、左右輪の差動は通常のデファレンシャルギヤが担い、後前軸・後後軸の間では電気的な差動システムが働くという。

 また、走りの制御では、下り坂・減速時における回生制御や、ブレーキペダル操作時の協調制御(空気圧のサービスブレーキと回生ブレーキが協調して作動する)が採り入れられている。

 なお、他社ではダイムラートラックの大型FCトラック「メルセデス・ベンツGen H2」が、先読みFCパワートレイン制御を搭載しているが、いまのところ今回の実証車では、日野が「プロフィアハイブリッド」で実用化した革新技術「AI勾配先読みハイブリッド制御」のFCV版は搭載していない、とのことだった。

 さらに小型EVトラック「デュトロZ EV」のようなワンペダルオペレーション操作も実装していない。これは運行形態が小型とは異なることも一因のようだ。

キャブは静かで快適

 キャブ内の空調は、エアコン、ヒーターとも通常車と同様に使える。特に駐車時は排ガスと騒音が伴わないため、周辺環境や昼夜を問わず休憩できるのが大きな美点だ。もともと大型トラックゆえにバッテリー電力に余裕があるとはいえ、電力消費で不安が少ないのもFCVのメリットだろう。

 安全装備は、現行型プロフィア相当のADAS(先進ドライバー支援システム)を搭載しており、PCS(衝突被害軽減・衝突回避支援ブレーキ)とLDWS(車線逸脱警報)、サイトアラウンドモニターシステムなどを備える。レーンキーピングアシスト(LKA、車線維持支援)については搭載していないが、大型FCトラックは電動油圧式パワーステアリングを装備しているので、機能の実装はそれほど難しくないと思われる。

 いっぽう積載性では、キャブバックに水素タンク2本を搭載するため、荷台全長が約800mm減少しているものの、積載量はディーゼル車と同等としている。大型FCトラックのパワートレイン・水素タンクのトータル重量が、ディーゼル車とあまり差がないことは興味深い。

公開当日の夜から運行開始

ヤマト運輸グリーンイノベーション開発部の上野 公シニアマネージャー(左)、輸送オペレーションマネジメント部の堰向直彦シニアマネージャー(右)
ヤマト運輸グリーンイノベーション開発部の上野 公シニアマネージャー(左)、輸送オペレーションマネジメント部の堰向直彦シニアマネージャー(右)

 この日、都内で大型FCトラックを公開したヤマト運輸グリーンイノベーション開発部の上野 公シニアマネージャーは、「ラストワンマイル配送のEV化だけではなく、幹線領域にも対応しなければカーボンニュートラルは実現できない。大型FCトラックはその第一歩で、数年前からトヨタ、日野と協議を進めながら開発してきた。サステナブル経営のために環境に配慮したクルマが必要だが、実際に使えるのかを検証していく」と話す。

 ヤマト運輸では、ドライバン架装の大型FCトラック1台を、東京・羽田~群馬・前橋間での拠点間輸送に投入し、公開当日の夜から運行を開始している。積荷は宅配貨物を積みこんだロールボックスパレット(カゴ台車)で、荷台内法長の減少から、ディーゼル車に対して2台減の最大16台を積みこむ。
 
 なお、西濃運輸ではドライバン架装の実証車1台を、東京・江東~神奈川・相模原~同・小田原間での拠点間輸送(5月19日以降)に、アサヒグループおよびNLJ(NEXT Logistics Japan)ではウイング架装の実証車1台を、茨城・守谷~東京・平和島~神奈川・相模原間での製品輸送(6月以降)に、それぞれ投入する。テスト期間は未定。

【画像ギャラリー】ディテールから探る日野プロフィアFRベースの大型FCトラック実証車!(17枚)画像ギャラリー

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