トレーラで「100km」をバック走行!? ギネス世界記録へ異例の挑戦!

トレーラで「100km」をバック走行!? ギネス世界記録へ異例の挑戦!

 車体の大きさとともに、一般的な自動車とは逆ハンドルになるトレーラのバックは、非常に難しい。そんなトレーラのバック走行によるギネス世界記録への挑戦が、ベンツの電動フラッグシップトラックを使ってドイツで行なわれる。目指す新記録はなんと「100km」だ。

 難しいトレーラのバックもトラックドライバーにとっては日常の一部。異例の挑戦は、職業ドライバーの日々の「偉業」に注目を集め、そのイメージを向上することと、電動化・交通安全への啓発を目的としている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

ベンツのトラックが異例の挑戦

トレーラで「100km」をバック走行!? ギネス世界記録へ異例の挑戦!
世界記録に挑戦するマルコ・ヘルグルーヴェ氏

 メルセデスベンツ・トラックスが異例の「アクティビティ」を計画している。トラック業界と社会の共通のトピック、すなわち電動化・交通安全・トラックドライバーのイメージ向上に注目を集めるためだ。

 この目的を達成するためメルセデスベンツ・トラックスは、バッテリーEV(BEV)トラックの新たなフラッグシップである「eアクトロス600」にセミトレーラを連結し、休憩なしで100km以上をバック走行させる。

 連接点を持つセミトレーラのバックは一般的な自動車とは逆ハンドルになり、運転操作の中でも難しいとされる。「トレーラでバック走行した距離」のギネス世界記録はもともとはドイツが保持していたが、2020年に米国で「約89km」という新記録が誕生しており、成功すれば記録は再びドイツのものになる。

 世界記録への挑戦は2025年6月4日にドイツのザクセン=アンハルト州オッシャースレーベンで行なわれる予定。閉鎖コースで記録を更新した後、さらに公道を約30km走行し(もちろんバックで)、同州ハルバーシュタットにあるダイムラー・トラックのグローバル部品センターにゴールするという計画だ。

 なお、グローバル部品センターはメルセデス・ベンツのトラックパーツを全世界へ配送するため、7月10日に正式にオープンする。

 ハンドルを握るのは、ベルリン近郊で育ったドイツ軍将校のマルコ・ヘルグルーヴェ氏だ。トラック愛好家であり、この記録の発起人でもある同氏は、2008年に「64km」という初めての記録を樹立している。世界記録の奪還を目指すヘルグルーヴェ氏は次のように話している。

「トラックが大好きなトラックドライバーの一人として、再びこの記録に挑戦できることを光栄に思っています。最初に世界記録を樹立して以来、技術面では様々な事が起こりましたが、BEVトラックで記録が達成されたことはまだありません。

 長距離輸送の電動化を象徴するメルセデス・ベンツの新フラッグシップ『eアクトロス600』は、メーカーが新境地を切り開いたトラックです。長時間にわたるトレーラのバック走行は大きなチャレンジですが、これまでのテスト走行は非常に順調に進んでいます。eアクトロス600で走行するのは楽しく、とても快適です。

 この機会を借りてメルセデスベンツ・トラックスの皆様のご支援に、心より感謝申し上げます」。

ドライバーの地位向上と電動化・交通安全啓発の契機に

トレーラで「100km」をバック走行!? ギネス世界記録へ異例の挑戦!
記録への挑戦はドライバーのイメージ向上の狙いもある

 いっぽう、メルセデスベンツ・トラックスで製品エンジニアリングを担当するライナー・ミュラー=フィンケルダイ氏は、この挑戦の意義について次のように話している。

「ヘルグルーヴェ氏が新たな挑戦のパートナーにeアクトロス600を選んでくれたことを大変嬉しく思います。BEVトラックでバックするという彼のアイデアはまさに先駆的な精神を表しており、変革を推進している私たちも共感できます。

 同時に、こうした活動は重要な公共のテーマに多くの注目を集める機会も与えてくれます。

 フロントにベンツの『3ポインテッド・スター』をあしらった数多くのトラックの中でも、電動フラッグシップのeアクトロス600は電気駆動による長距離輸送が既に利用可能であるという事実を象徴しています。ただし、顧客の購買意欲を高めるには、充電インフラ開発を進めるためのモメンタムも必要です。

 また、常にアシスタンスシステムを開発してきた自動車メーカーとして、私たちは交通安全のパイオニアです。eアクトロス600に搭載する安全システムは法定要件を上回っていますが、事故をなくすためには全ての道路利用者の意識を向上することも重量です。

 さらに、私たちが製造するのはプロのドライバーのための車両なので、彼らの社会的イメージを向上することも重視しています。特にドライバー不足が深刻化している現在、社会のために懸命に働いているトラックドライバーが正当な評価を受けることは不可欠と言えます。難しいトレーラでのバックも彼らにとっては日常の一部であって、こうしたことを考えれば、トラックドライバーの仕事自体がアートであるといっても過言ではないでしょう」。

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