ダイムラートラックは10月10日、1充電航続距離500kmの新大型EVトラック「メルセデス・ベンツeアクトロス600」を発表した。500kmとは、平均的な長距離トラック運行ルートの片道を補充電なしで走行できる航続力で、同社では長期的に「長距離トラックの大半を置き換えられるEV」と位置づける。今年から受注を開始し、1年後の2024年末に量産をスタートする。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/ダイムラートラック
新しいスタイリングと高性能バッテリー
「eアクトロス600」は、昨秋開催の商用車ショー・IAAトランスポーテーション2022でダイムラーが発表したコンセプトモデル「eアクトロス・ロングホール(長距離の意)」の生産型となる。セミトレーラ牽引用のセミトラクタ2軸4×2モデルは最大連結総重量(GCW)44トンで、その場合の最大積載量は約22トンを確保する。単車型およびフルトラクタ車型として、3軸6×2モデルも設定する。
eアクトロス600のベースとなっているのは、現行アクトロスのプラットフォームではあるものの、空気抵抗を大幅に低減させた新エステリアを採用する。
キャブ前面のフロントパネルは、写真のとおりグリルレスだが、実車は美しい磁器のようなハリのある曲面になっており、スリーポインテッドスターが引き立つデザインである。また、開口部をフロントバンパーに集約すると同時に、「シャシー」「キャブ」という機能をはっきり分けて見せるという、電動トラックらしさと未来的なスタイリングに挑んだといえるが、大型トラックの豪傑感を象徴する、巨大なフロントグリルに馴染んできたドライバーの反応が気になるところだ。
空気抵抗を低減させるために、現行アクトロスに対してフロント部分を80mm延長するとともに、キャブ正面からルーフとサイドへは、空気がスムーズに流れていくよう細部のフォルムを吟味。新しいLEDヘッドライトを装着するフロントバンパーとキャブの隙間も大幅に縮小し、空気抵抗を9%も抑制した。これらのディテールは、今後ディーゼルモデルの改良にも反映されるようである。
その新しいスタイリングの中身には、2021年から発売中の大型EVトラック「eアクトロス300/400」とは、完全に異なる新開発電動パワートレインを採用している。
高電圧バッテリーは、総容量621kWhのLFPリチウムイオン電池(207kWh×3基)をシャシー下に搭載する。この電池はCATL(寧徳時代)製だが、「~300/400」のそれとは異なり、1基あたりの容量はその2倍という高性能タイプで、なんと10年120万km走行を経ても、初期性能の80%超を維持し、充電率95%まで使うことができる高耐久・長寿命を備えるという。
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