消防車・消防機器の世界的大手、ローゼンバウアーはハンブルクの消防当局向けに電動消防車「RT」の特別モデルを納車した。車両や消防ポンプは電気で駆動するが、バックアップ用のエンジンでも駆動できる。
また、欧州最大級の港湾都市ハンブルクの要望に応えて、最大水深800mmの浸水地域でも消防活動が可能となるよう車高調整機能を開発したという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Rosenbauer International AG.
ローゼンバウアーの新型電動消防車がハンブルクに
オーストリアの大手消防車メーカー・ローゼンバウアーは2025年3月17日、ドイツ第2の都市ハンブルク(自由ハンザ都市ハンブルク)の消防当局に新型「RT」(Revolutionary Technology)消防車の第1号車を納車したことを発表した。
ハンブルク消防に納車されたRTモデルは、電動の救助消防車(eHLF20)として設計されたものだ(HLFはドイツ/オーストリアなどで用いられる消防車の車両タイプで、ドイツ語の “Hilfeleistungslöschgruppenfahrzeug” =救助・消防車両の略)。
バッテリーEVとして車両と消防ポンプの両方が電気で駆動するが、バックアップ用のエネルギーシステム(ディーゼルエンジン)による駆動も可能だ。消防当局の通常業務に加えて極限の環境でもサービスを継続できる信頼性を誇るという。
RTの車両コンセプト自体はローゼンバウアーが2020年に発表しており、同社製の消防車を扱っている帝国繊維が2023年に日本でも紹介している。
RTはドライバーとクルー用のキャビンを統合した上で、全輪駆動・全輪操舵を実現するなど革新的な消防活動を支援するために設計された。そして、ハンブルク向けの要件として新たに水深800mmまでの渡河能力を備え、特に港湾地区など災害等により浸水が予想される地域でも消防活動を行なえるようになった。
大都市向けの未来の消防車
RTのホイールベースは4100mmだが、後軸操舵により小回りが利き、回転直径はわずか13.5メートル(半径6.75メートル)だ。水1600リットルと泡消火剤120リットルの搭載は標準のHLF20と同等。
キャビンには最大8人の隊員を乗せることができ、ミラーに変わるカメラシステムを搭載する。また、車両の幅は2.35メートルとコンパクト。今回の車両の特徴である最大水深800mmまで対応可能な渡河能力は車高調整機能により実現したもので、標準モデルにはなく、顧客の要望に応じて開発した。
ハンブルク消防のヨルク・ザウアーマン氏は次のようにコメントしている。
「全電動の救助消防車を調達したことで、消防・救助活動は新たな境地を開きます。新型消防車により現場での作業は大幅に簡素化され、ハンブルクはより強力でより持続可能な消防署の模範となるでしょう。
最新の消防車がハンブルクのニーズに合わせて設計されたことを誇りに思っています。このプロジェクトを通じて大都市圏での防災に現代の駆動技術が多くの利点をもたらすことを実証します」。
いっぽう、ローゼンバウアーのCEOを務めるセバスチャン・ヴォルフ氏は次のように話した。
「ハンブルク消防と共同で開発した特別なRTを、私たちは誇りに思っています。この革新的な車両アーキテクチャがお客様の特定の運用ニーズに対して高い順応性を持っていることを改めて証明するものであり、この車両はまさに未来の消防車です」。
ハンブルク向けのeHLFの計画は、RT発表の翌年である2021年に始まったという。2022年に最初の話し合いが行なわれ、2023年に正式に発注した。
革新的な車両となるので、乗務する隊員がスムーズに移行できるように、重要な車両機能を対話形式で学習できるeラーニングプログラムをローゼンバウアーが開発したそうで、こうしたトレーニングを通じてハンブルク消防は新型RTの配備に向けた準備を整えている。
【画像ギャラリー】ローゼンバウアー「RT」のハンブルク消防モデル(3枚)画像ギャラリー
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