2024年1月2日に羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突し、炎上した事故は記憶に新しい。こうした航空機火災に対応するのがARFFと呼ばれる空港用消防車だ。
消防機器で世界的大手のローゼンバウアーは、このたび電動のARFFを発売したが、加速性能など電動化による利点が空港用消防車には多いそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Rosenbauer International AG.・フルロード編集部
ローゼンバウアーが電動の空港用消防車を発売
消防機器のローゼンバウアー(オーストリア)は2024年10月9日、純電動の空港用消防車「パンサー6×6エレクトリック」を発売した。ARFF(Aircraft Rescue and Firefighting)と呼ばれる、航空機火災に対応する車両で、加速性能と最高速度は従来車(ディーゼル車)を超えるそうだ。
もちろん配備から訓練、待機時まで日々のCO2排出量は大幅に削減され、航空業界と空港の環境目標達成も支援する。
同車は2022年の「インターシュッツ」見本市で初めてコンセプトが公開されたもの。2025年末までに最初の車両がプレシリーズ(量産前の試作車)として納車される予定となっている。
なお、ローゼンバウアーの消防車は日本では帝国繊維が輸入元となって各地に導入されている。2023年の東京国際消防防災展には電動の「RT」を出展していた(日本導入は「検討中」とのことだった)。
ローゼンバウアー・インターナショナルの最高販売責任者、アンドレアス・ツェラー氏はプレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「私たちはパンサー6×6エレクトリックにより製品カテゴリーに新しい基準を確立し、電動ドライブによる最高水準の安全性をもたらしたいと考えています。空港のネットゼロという目標達成に貢献するだけでなく、パフォーマンスという側面においても弊社のお客様の期待に応える車両です」。
「RT」の開発で培った電動モビリティ技術を活用
同車の開発には、コンセプト段階から空港や消防の関係者が関わっている。日々の業務を純電動で行ないつつ、「0-80㎞/hの加速が25秒以内」と「トップスピードが120km/h」という要件を達成した。放水ポンプも9000リットル/分というフル性能を電動で発揮する。
ユーザーの期待する要件を直接盛り込んだパンサー6×6エレクトリックは、したがって既存の「パンサー」に電動モビリティの優位性をもたらし、騒音と汚染物質の排出を最小に抑える車両になっているそうだ。
ローゼンバウアーが開発した電気駆動用のプラットフォームは、高電圧バッテリーにより現場まで2~3分で到着し、消火剤を放出し、帰ってくるまでに充分なエネルギーを供給する。
これらの性能は、ICAO(国際民間航空機関)やFAA(アメリカ連邦航空局)の要件に従ったものだ。プロトタイプによる初期試験では、このような走行を1度の充電で複数回行なう能力が示され、また80km/hまでの加速時間は20秒未満だった。優れた走行性能は4基の電動モーターによるものだ。
直流(急速充電)と交流(普通充電)の両方を利用でき、最大300kWでの充電に対応するため、短時間で次のオペレーションに備えることができる。また車両には「エネルギー・バックアップシステム」が搭載され、継続的な使用が保証されるという。
高性能ポンプは電動のほか、バックアップシステムとの組み合わせでも作動し、消火システム(ポンプ、泡消火剤、タレット)の性能は従来のパンサーと同じだ。
ローゼンバウアーは、「RT」の開発などを通じて電動モビリティに関する知見を蓄積してきた。特に空港用消防車では電動化の利点が多く、今後世界中の空港で電動ARFFが活躍するようになるとしている。
【画像ギャラリー】ローゼンバウアーの電動消防車「パンサー6×6エレクトリック」と「RT」(5枚)画像ギャラリー
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