H45型エンジンを搭載するMAN hTGX
H45型水素エンジンは出力が383kW(520hp)、トルクは2500Nm(@900-1300rpm)となる。水素を直接噴射することで応答性に優れ、燃料には700 bar圧力で保存する高圧水素ガスを使う。タンクに充填可能な水素の量は56kgだ(水素は比重が非常に小さいため、容積に比べて軽い)。
タンクの再充填にかかる時間は15分未満だ。燃焼によって排出ガスは発生するが、その内のCO2の量はトンキロ(1トンの重さを1km運んだ場合の輸送量)当たり1グラム未満となるため、EUの新規制の下では「ゼロ・エミッション車」の要件を満たしている。
同社で研究開発を担当する執行役員、フレデリック・ゾーム博士は次のように説明している。
「EUの新しいCO2排出規制は、水素燃焼エンジンを搭載するトラックをゼロ・エミッション車に分類しています。すなわちこうした車両によってもCO2の削減目標を達成できるのです。
今回の少量生産は、水素エンジンでBEVを補完するという新しい道を切り開きます。併せて、国や地域によっては税金や高速道路料金の減免などの利点もあるでしょう。
MANのニュルンベルク工場は世界で最も革新的なエンジン技術を有しており、水素を燃料として利用するための研究も数十年に渡り続けられてきました。この経験によりhTGXが可能になりました。ベース車両は高品質・省メンテナンス性で実績・信頼のあるTG系の車両です。
バッテリー技術と水素技術の先には水素燃料電池があり、引き続きその研究も進めますが、真の意味で市場に浸透し競争力を持つには、まだ時間がかかるでしょう。MANは(水素エンジンで)水素技術の蓄積と準備を進めます」。
MANと水素エンジンの開発史
MANには水素エンジン車の開発において数十年に及ぶ長い歴史がある。初めて水素駆動商用車を一般公開したのは1996年のハノーバー・フェアだった。「SL202」都市バスの天然ガスエンジンを水素で運行できるようにしたものだ。
ショーの後はエルランゲンで実用試験を行ない、延べ6万人の乗客を乗せて1万3000kmを走った。このバスは最終的にミュンヘンで通常運行のサービスに組み込まれた。
1998年にはミュンヘン空港の水素連接バス3台を製造し、2008年まで使用された。2006年から2009年にはさらに14第の水素バスを製造した。
こうした初期の商用車での経験をもとに、最近では公道用、オフロード用、船舶用の水素エンジンの開発と試験を進めている。トラック以外に水素エンジンが適した用途として、例えば雪上車などの特殊車両、非電化鉄道、鉱山用の掘削機やクレーンなどがあげられる。
また、工場等で電気のほかに排熱も利用する場合など、定置式の(発電用)エンジンとしても有望だ。
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