夢物語か未来への希望か!? 国土交通省が提唱する「自動物流道路」構想を読む

夢物語か未来への希望か!? 国土交通省が提唱する「自動物流道路」構想を読む

 ずいぶんと昔の話になるが、昭和40年代に「東海道ベルトコンベア構想」なるものがあった。要するに東海道を長大なベルトコンベアで結び、その上に貨物コンテナを載せて搬送するという構想だった。

 主な目的は、当時大きな社会問題になりつつあった自動車公害に対処するというものだったが、令和の世に登場した同工異曲の「東海道ベルトコンベア構想」は、主たる狙いはズバリ「2024年問題」の解消だ。極めて壮大な構想だが、果してまたしても夢物語で終わるのか? それとも未来への希望となるのか?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
画像/国土交通省・CargoSousTerrain・Magway・フルロード編集部

自動物流道路=オートフロー・ロードとは

夢物語か未来への希望か!? 国土交通省が提唱する「自動物流道路」構想を読む
国交省による「WISENETのコンセプト」

 国土交通省は2024年2月21日、第1回の「自動物流道路に関する検討会」を開催した。

 この検討会は、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線部会においてとりまとめられた「高規格道路ネットワークのあり方中間とりまとめ」において、物流危機への対応や温室効果ガス削減に向けて、新たな物流形態として道路空間をフル活用した「自動物流道路」の構築に向けた検討を進める必要があるとされたことから設置されたもの。

 目指すべき方向性、必要な機能や技術、課題等を検討するため、有識者、関係団体及び関係省庁からなる検討会を今後複数回開催した上で、2024年夏ごろに中間とりまとめを報告し、さらに議論を重ね、最終とりまとめを発表する予定となっている。

 では、そもそも「自動物流道路(オートフロー・ロード)」とは一体どのようなものだろうか?

 国交省は「2050年、世界一、賢く・安全で・持続可能な基盤ネットワークシステム」をWISENET(ワイズネット)と位置づけ、そのための政策展開を図るとしている。その要点となるのが、サービスレベル達成型の道路行政に転換する「シームレスネットワークの構築」と、道路ネットワークをフル活用する「技術創造による多機能空間への進化」だ。

 日本の道路の都市間連絡速度は平均時速にすると61km/hだが、ドイツは84km/hだという。これは速度無制限のアウトバーンの影響だけではない。なぜなら、日本と道路事情がよく似た隣国・韓国も77km/hと差が開いているからだ。諸外国の都市間連絡速度はおおむね80km/h前後で、日本の道路ネットワークのサービスレベルは外国と比べると充分とは言えない。

 その理由の一つが、高速道路のおよそ4割を占めるとされる「暫定2車線」(4車線以上で計画されながら、片側1車線ずつの合計2車線で供用を開始している路線)だ。最高速度が制限されるほか、追い越しができないので実際の走行速度は大型トラックなど低速車に合わせることになる。

 また、国内では自動車による移動時間の41%は渋滞による「損失」として失われている。これは370万人分の労働時間に相当し、日本のCO2排出量の1.3%は渋滞により発生しているという計算になる。

 道路自体の品質は高いが、道路ネットワークとしては充分な活用ができておらず、特に物流の生産性の低さが経済成長の足かせになっている。2050年までのGDPの伸び率を見ると、米国は2000年比で2.3倍、EU圏は同1.7倍という予想に対して、日本は同1.3倍と国際的地位の低下が続くと予想され、人口減少下でも経済成長を実現するために、物流強化は欠かせない。

 ワイズネット2050では、道路に求められるサービスレベルを達成するには、シームレスなサービスが確保された高規格道路ネットワークを構築するとともに、乗用車専用・物流専用といった新たなネットワークの進化を検討する必要があるとされた。

 併せて重要なのが「自動車の道路」から「多様な価値を支える多機能空間」への進化だ。道路空間を利用した、人手によらない新たな物流システムとして「自動物流道路(オートフロー・ロード)」の実現を目指す、というのが国交省による説明である。

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