ダイムラー・トラックは2030年にむけたグループの戦略を発表した。その中で、三菱ふそうと日野自動車の経営統合への言及があったほか、グローバル市場でゼロエミッション車が減速していることから、BEV/FCEVのロードマップを修正した。
いっぽうで自動運転トラックとSDV(ソフトウェア定義車両)の優先順位が上がっており、電動化に向けた「加速」から、各技術のバランスをとる「スピード調整」に重点が移っているようだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
画像/Daimler Truck AG
ダイムラーの Capital Markets Day 2025
世界最大級の商用車グループとなっているダイムラー・トラック(ドイツ)は2025年7月8日、米国で投資家向けの説明会「キャピタル・マーケット・デイ2025」を開催した。
投資家向けのイベントなので、2030年をターゲットとする財務目標をどう達成するかという話題が中心なのだが、これに合わせて5つのグループ戦略の柱が発表されたほか、三菱ふそうと日野自動車の経営統合の効果にも言及があった。
また、グローバル市場の動向からバッテリーEV(BEV)/燃料電池EV(FCEV)トラックのロードマップが更新され、ゼロエミッション車事業について軌道修正が行なわれた。
収益性とレジリエンス(回復力)を向上するため、2030年までに調整後ROS(売上高利益率)12%以上を目指すといい、継続的な成長に加えて欧州でのコストカットとふそう・日野の統合による効果が中心的な役割を果たすことを見込んでいる。
グループ戦略の5つの柱
こうした目標を達成するために、5つの柱をグループの戦略として重視する。
一つ目は、規模と効率性により潜在能力を最大限に引き出すことで、重要分野における規模の経済を重視する。ふそうと日野の経営統合も、この戦略を反映したものだという。
二つ目は、顧客中心のソリューションを提供する企業への進化で、部品・販売・サービスネットワークへ追加投資し、サービス事業をさらに強化する。
三つ目は、変革における適切なスピードで、BEVやFCEVなどゼロエミッション車への投資を見直す。いっぽうでディーゼルエンジンへの投資が増やされ、それぞれの技術への投資額を慎重にバランスさせることで適切なスピードに調整する。SDV(ソフトウェア定義車両)開発など重要分野ではパートナーシップを活用しつつモジュール型の技術戦略を採用する。
四つ目は、無駄のない効率的な事業モデルで、欧州単体で2030年までに10億ユーロのコスト削減を実施する。人員の最適化も実施するとしており、ドイツだけで5000人のリストラが行なわれるようだ
五つ目は、パフォーマンス文化の醸成で、「よりシンプルに、より早く、より強く」という原則に基づき社内文化の変革を進める。組織の合理化、意思決定の迅速化、強化された成果報酬モデルの導入などが含まれているという。
ふそうと日野の統合について

三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合は、それぞれの親会社であるダイムラー・トラックとトヨタ自動車が合意したもので、2026年4月に両社が25%ずつ出資する持ち株会社を設立し、ふそうと日野はその完全子会社となる予定だ。
出資額は均等だが、議決権ベースではダイムラーの持ち分が多くなるのは、両者を合わせた小型トラックの販売シェアが過半数を超えてしまうためだという。
日野とふそうはそれぞれのグループから離脱することになるが、両者から支援が受けられ、開発・調達・製造などスケールメリットを活用できる。両社のトラックモデル等の方針についてはこれまで非公表だったが、キャピタル・マーケット・デイでわずかではあるが方向性が示された。
ダイムラーはこの統合を通じてROSを50ベーシスポイント、ROCE(使用資本利益率)を300ベーシスポイント以上改善したい考えで、そのために単価の高い(マージンが大きい)大型トラックの販売比率を高めたいようだ。
2024年の売上高で大型トラックの比率は55%だが、2030年の予測では70%となっている。中型トラックは20%で変わらず、小型トラックは15%から5%未満、バスは10%から5%以上という見込みになっている。
ふそうと日野は小型トラックではそれぞれに強みを持っているが、統合によるシェアの独占を回避するため、小型トラックへの対応に苦慮しているようで、とりわけ日本市場での展開は注視する必要がありそうだ。
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