政府は「物流総合効率化法」および「トラック法」の改正を閣議決定した。また2030年度に向けた中長期計画を取りまとめ、トラックドライバーの10%以上の賃上げに向けて構造的な環境を構築するとした。
「2024年問題」による物流停滞が現実味を帯びてくるなか、ドライバーの賃上げや運送業の「多重下請」規制など、政府の対策が本格化している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/首相官邸・フルロード編集部
図・表/国土交通省・中小企業庁
「2024年問題」で関係法を改正へ
国土交通省は2024年2月13日、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表した。
前者は「物流総合効率化法」(物流法)、後者は「トラック法」とも呼ばれ、トラック運送業と関係の深い法律だ。
4月からトラックドライバーなどに働き方改革関連法が適用され、併せて連続運転時間や休憩時間などを定めた改正改善基準告示も施行される。ドライバーの労働環境改善は急務とはいえ、こうした改革により輸送力が不足し物流が停滞する可能性があり、「物流の2024年問題」と総称されている。
また、近年は軽トラック等による運送業(貨物軽自動車運送事業)の死亡・重傷事故が6年で倍増するなど、こちらにも対策が求められていた。許可制の「一般貨物」などとは異なり「軽貨物」は届出制で、手続きを行なえば誰でも始められるからだ。
物流は生活と経済を支える社会インフラとされ、停滞を防ぎ、事故をなくし、持続可能な物流を実現しなければならない。そのためには運送会社だけではなく荷主・消費者の行動変容に繋がるような抜本的・総合的な対策が必要となっている。
仮に2024年問題に対して何も対策しなければ、2030年には34%の輸送力不足に陥るとされ、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」及び「貨物自動車運送事業法」の改正に至った。
物流の多重下請等も法規制
法改正の内容だが、まず物流法では荷主と事業者の「取り組むべき措置」に努力義務が課され、その判断基準を国が策定する。国は基準に基づいて着荷主・発荷主・実運送会社・元請・利用運送会社の取組状況について「指導・助言」及び「調査・公表」を実施する。
また、一定規模以上の事業者を「特定事業者」に指定し、中長期計画の作成と定期報告などを義務付ける。特定事業者には物流統括管理者の選任が求められるほか、取り組みが不充分な場合「勧告・命令」を実施する。
いっぽうトラック法の改正では、元請会社から実運送会社まで何重にも利用運送会社を経由する「多重下請」が問題になっていることから、元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成が義務付けられる。
他の運送会社を利用する(=下請けに出す)場合には、その「利用の適正化」について努力義務が課せられる。当然ながらこの義務は、元請だけでなく下請関係にある利用運送(=中間業者)にも適用される。
運送契約を締結する際は、業務の内容やその対価(付帯業務の料金、燃料サーチャージなども含む)等を記載した書面の交付が義務付けられる。中間業者にも適用されるのは、こちらも同じだ。
事故が急増している軽自動車による運送事業者に対しては、法令等の必要知識を担保するため管理者選任、講習受講、事故報告などが義務付けられる。また、軽トラ事業者の事故報告・安全確保命令等に関する情報が国交省の公表対象となる。
こうした法改正による効果として、施行後3年で荷待ち・荷役時間を一人当たり年間で125時間削減するほか、積載率向上により輸送能力を16%向上することを見込んでいる(2019年度比)。
コメント
コメントの使い方業者(運送会社)だけに認可や許可をするだけでなく、ドライバー自身にも運転免許だけあればいいのでなく、免許があっても仕事は別で試験等で資格制度にして一定の水準を作らないと質が伴わない。
手当てが上がりたいのであればドライバーもプロ意識を持って仕事に取り組めるような制度も必要。