トラックの製造における廃棄物をなくすため、スカニアは循環型ビジネスに取り組んでいる。スカニア車のフロントグリルにはペットボトルをリサイクルした再生PET樹脂が使われているそうだ。
グローバルな循環型の取り組みは、従業員の環境意識の向上にもつながっているという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Scania CV AB
再生PETをトラックのフロントグリルに
スウェーデンを本拠とするトラックメーカーのスカニアは、持続可能な未来にむけて「循環性」を重視しており、様々な取り組みを進めている。
自動車メーカーにとって、限りある資源を最大限に活用し、バリューチェーン全体で廃棄される物をできるだけ少なくし、製品寿命を延ばしよりスマートな再利用を促すことも重要な環境対策だ。
バージン素材をリサイクルしたPET樹脂に置き換えることも環境への影響を軽減する手段であり、同時に廃棄物に対する従業員の認識を変えることにもつながっているという。
優れた設計は車両のライフサイクル全体を変革し、新たな付加価値をもたらすものとなる。スカニアがブラジルで始めた取り組みは、その良い例だ。
ブラジル・サンパウロ州にあるスカニアのサンベルナルド・ド・カンポ工場は他の自動車メーカーからも注目される取り組みを行なっている。同工場の調達部門は、バージンプラスチックを再生PETに置き換える方法を見出した。
この工場で製造されるすべてのトラックのフロントグリルに使われているのは、ペットボトルに使われているPET樹脂だ。
スカニア・ラテンアメリカのコミュニケーション・サステナビリティ担当ディレクター、パトリシア・アチョーリ氏は次のように述べている。
「これは私たちにとって初めての取り組みではありません。スカニアのグローバルな方向性に則り、『廃棄物をなくす』というコアバリューの実現と循環型経済への貢献を目指しています。そのために従業員と事業、そして業界全体に対して、これまでとは違う発想をするよう促しています」。
ブラジルから欧州にも波及
トラックのフロントグリルは、一般にプラスチック製の大きなパーツでできており、自動車業界では俗に「Tボーン」とも呼ばれる。グリルはメーカーのロゴやエンブレムを表示する部分であり、大型トラックで最も「見られる」場所だ。
スカニアはここに再生PET樹脂を使用する。この取り組みを通じて、年間3万台のトラックの生産により、150万本のペットボトルが埋め立て・焼却処理されるのを防いでいるという。廃棄される素材にセカンドライフを与えるイノベーションの最前線だ。
それぞれのグリルはポリカーボネート(PC)とポリエチレンテレフタレート(PET)の混合物でできたプラスチックで、重さは約5kgある。
PET樹脂は素材の20%を占め、以前はバージン材を調達していたが、現在はリサイクルのPET樹脂を使用している。重さでいうと約1kgとなり、これはペットボトル約50本分に相当する。廃棄物を減らし、CO2排出を年間で62トン減らすとともに、バージン材と比較してエネルギーの使用量は16%減る。
こうした成果は強力なパートナーシップによって実現した。ブラジルのスカニア調達チームは使用済みペットボトルの回収や処理を行なうサプライヤーと協力し、ボトルの洗浄、加工、PCとの混合を経て、スカニア車のグリルにも使える高品質のプラスチックミックスを製造している。
プラスチック素材の持続可能性はスカニアが掲げる「循環性」への重要な一歩だ。廃棄物を資源に変えることで製造業の環境負荷を低減し、よりクリーンな未来を支えている。
スカニアは他にもギアボックスのリマニ(再製造)や、エンジン部品を鋳造する際の鋳型に使う砂をモルタル製造に活用したり、古い作業服をトラックの運転席のパネルに使用するなど、トラックの製造を通じて様々な循環型ビジネスに取り組んでいる。
そのうちのいくつかはラテンアメリカ(ブラジル)での取り組みが、本社のある欧州まで広がったものだといい、グローバルな循環型ビジネスが従業員の認識にも好循環を生み出している。
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