片道500kmを補充電なしで運行
eアクトロス600は、1回の満充電で航続距離500kmを実現する。ダイムラーの調査では、欧州のメルセデス・ベンツ長距離トラックユーザーのうち約6割が、500km未満での運行であり、片道なら無補充電で走行できる能力だとしている。
充電は、普通および急速充電(交流)と欧州標準の急速充電規格CCS方式(直流・最大で出力400kW)に対応し、メーカーオプションまたは後付けで、メガワット充電(MCS、出力1MW級)にも対応可能となっている。
欧州では、トラックドライバーが6~9時間乗務する場合は30分の休憩、9時間超の乗務では45分の休憩とともに、1日あたり連続11時間の休憩が義務付けられている。そのため、往路の目的地(自社拠点や荷下ろし先など)で非稼働時間に普通充電を行なえば、復路も無補充電で走れる、という運行スタイルを想定している。
むろん、充電インフラが整備されれば……の話ではあるが、さらに今後MCSが使えれば、わずか30分でバッテリー充電率20%→80%に達するため、法定の休憩時間内でかなり回復できる。そうなれば、1台の稼働時間が拡大でき、交代乗務も可能となるだろう。なお、ダイムラーは、同業のボルボトラックス、トレイトン(MAN、スカニアなど)との3社共同で、大型商用車専用の欧州充電インフラ網を整備する計画を進めている。
ディーゼル車比2.5倍の価格だがユーザーの利益も高い!?
ダイムラーでは、eアクトロス600の価格を「ディーゼル車の約2.5倍」と公表している。しかし同時に、EVトラックの導入補助、自動車税の10年間免除、さらに大型車対距離課金(HGVトール:アウトバーンなどの道路通行料)に対する今年12月からのCO2排出税の上乗せも免除……といったインセンティブ(優遇制度)が得られるため、保有5年間または60万km走行後のトータルコストは、ディーゼル車よりも優位だとしている。
また、欧州の電力供給エネルギーミックス条件において、eアクトロス600はディーゼル・アクトロスに対し約40%のCO2排出削減に相当し、全面的に再生可能エネルギーを利用した場合は、原材料から10年間の製品ライフまでの間に、約80%のCO2削減を達成できるという。
これらは、ドイツ(CO2排出削減に熱心な国の一つ)での条件なので、それ以外の国で同じような話になるわけではないが、オランダやフランスなど、電動車比率の高いEU加盟国市場でも支持されそうだ。
eアクトロス600は、ドイツ南西部に所在するダイムラー最大のトラック生産拠点・ヴェルト工場において、ディーゼル車と混流生産される。これは、最終組立をまったく別のラインで行なう「~300/400」とは異なっており、同社が「600」を大型EVトラック製品の本命モデル、そして将来の主力モデルとして考えている証左といえるかもしれない。
【画像ギャラリー】大型長距離EVトラック・メルセデス・ベンツeアクトロス600はデザインも先進的!(20枚)画像ギャラリー
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