欧州で試乗イベントを開催
メルセデスベンツ・トラックスの目標は、2030年までに欧州でCO2ニュートラルな車両の比率を50%にすることだ。欧州の顧客に電動モビリティの導入をさらに加速してもらうために、ヴェルト工場周辺で6月上旬から数週間の予定でBEVトラックへの試乗を含むイベントを計画している。
インフラ、サービス、BEVトラックなど、電動モビリティの重要な側面について専門家が解説するほか、eアクトロス300の試乗も可能だ。もちろんルートや積載量などは現実に即したものとなっている。
メルセデスベンツ・トラックスのCEOを務めるカリン・ラドストローム氏は次のように話している。
「ヴェルトで開催するeアクトロスの試乗イベントに多くの興味を持っていただいたことは、お客様の間で電動モビリティが受け入れられている証拠です。お客様が私たち関係者送っている強いシグナルは、より多くの電動のトラックを市場に投入し、充電インフラを拡充すること、そしてEVトラックがコストパリティ(=ディーゼル車と同等のコスト)を達成することです」
eエコニックは間もなく量産化
いっぽう、ミュンヘンで開催されたIFAT(上下水道、廃棄物処理などに関する世界最大級のトレードショー)で「eエコニック」が公開された。消防はしご車のベースなど日本にも導入されている「エコニック」は大型の低床特装用シャシで、eエコニックはそれを電動化したものだ。
低床シャシはゴミ収集など自治体での利用が多いトラックだが、電動化により騒音が非常に少ないeエコニックは、特に早朝の都市部などでの利用に適している。
eエコニックの構造は、ダイムラー・トラックのグローバル・プラットフォーム戦略の恩恵によるものといっても過言ではない。パワートレーンはeアクトロスのものと同じだからだ。
ヴェルト工場は2021年10月からeアクトロスを量産しており、同工場で低床シャシと組み合わせることで、早ければ今年の7月にもeエコニックの量産を開始する。
なお、フランクフルトで廃棄物の運搬を行なっているFES・フランクフルター・エンツォルグンクが量産前のeエコニックを使用して実用試験を行なっているそうだ。
充電インフラでは各社と提携
BEVトラックを運行する場合に欠かせない充電インフラに関しては、運送会社の駐車場や物流施設に設置する充電器の開発に、メルセデスベンツ・トラックス、シーメンス、ENGIE、EVボックスグループなどが共同で取り組んでいる。
ただ、長距離輸送となると毎日帰庫できるわけではないので、幹線道路沿いなどに公共の充電設備(パブリック・チャージャー)を整備することも重要になる。このため、欧州ではダイムラー・トラック、トレイトングループ、ボルボグループの3社が合弁企業を設立することで合意している。
合弁の目的は、欧州における長距離輸送用BEV大型トラックと長距離BEVバスのために、高性能な充電ネットワークを開発し、運用することだ。欧州の運送会社のオペレータはトラックのメーカーやブランドに関係なく、この充電ネットワークを使えるようになる。
ちなみにダイムラー、トレイトン、ボルボの3社は商用車の世界では欧州のトップ3であるとともに世界でも最大規模のグループだ。
HoLaプロジェクトと呼ばれる高性能充電ネットワークの整備計画は、ドイツ自動車工業会(VDA)の支援を受けており、ドイツ国内の4地点のうち2か所にメガワット充電システム(MCS)を備えた高性能充電器を設置し、実運用を通じて試験する。プロジェクトには他にも多くのパートナーや研究者が参加している。