ダイムラートラックの北米子会社(DTNA社)に属するフレイトライナーは、2022年5月18日、バッテリー電気式(BEV)大型トラック「eカスケイディア」の量産化を発表した。
ダイムラーは前年に欧州で「メルセデス・ベンツ」ブランドのBEV大型トラックの量産化を行なっている。航続距離や価格などの面でただちにディーゼル車を置き換えるものではないが、欧米ではBEVトラックを大型までフルラインナップした形になる。
先進国の主要市場で、ダイムラーグループがBEV大型トラックの量産化を残すのは日本市場のみとなった。日本での展開はどうなるのか? 世界最大の商用車グループの動向に注目だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Daimler Truck AG
プロトタイプで100万マイルを走行
ダイムラートラックの北米ブランドであるフレイトライナーは、2022年5月18日、バッテリー電気式(BEV)大型トラック(トラクタ)「eカスケイディア」の量産を開始すると発表した。
eカスケイディアの開発においては、プロトタイプを製造し、運送会社など顧客のもとでの実運用を通じて100万マイル(約160万km)を大幅に超える走行試験を行なったいう。
ベースとなったディーゼル版の「カスケイディア」は北米の長距離輸送用大型トラックでもベストセラーモデル。同車のプラットフォームを踏襲しつつ、BEV版のeカスケイディアにより顧客に「ゼロエミッション」という新たな価値をもたらす。
量産型のeカスケイディアは既に販売を開始しており、2022年中の納車を予定する。
ダイムラーグループは昨年(2021年)、欧州で「メルセデス・ベンツ」ブランドのBEV大型トラック「eアクトロス」の量産化と販売を開始した。プロトタイプにより電動フリートを構築し、実運用を通じで試験を行なうというアプローチはeアクトロスとeカスケイディアで共通している。
商用車で世界トップの自動車グループとされるダイムラーが、北米で大型トラクタまで電動化したことで、アメリカの運送会社はCO2ニュートラルの輸送に一歩近づいた形だ。
かつては「トライアッド」(三極)と言われた日米欧の各市場のうちで、ダイムラーが大型トラックの電動化を残すのは日本のみとなった(ダイムラートラックの日本向けブランドは「三菱ふそう」)。eカスケイディアは、ダイムラーの日本での展開を占う意味でも注目されそうだ。
近距離の輸送を想定
フレイトライナーが顧客と共にBEVトラックの開発を始めたのは2018年。地場輸送、食品配送、宅配など、広範な架装・用途に対応するためだ。
40台以上のeカスケイディアとeM2からなる「フレイトライナー・電動イノベーション&顧客体験フリート」を構築し、所属するプロトタイプ・トラックを顧客に渡して実運用を通して試験するというプロセスで、参加したのは米国の運送業界でも大手の約50社。
米国は「イノベーション」に協力的な企業が多いとされるが、顧客との関係が深い伝統トラックメーカーとしての強みもありそうだ。開発項目は多岐にわたり、多くのプロトタイプを作り、厳しい試験を行なったという。
その結果完成したBEVトラックは、パワフルかつ高効率なもので、バッテリーと駆動軸には複数のオプションがあるが、典型的な構成では航続距離は230マイル(約370km)となる。
eカスケイディアの用途としては、拠点での充電が可能な近距離のルート配送を想定しており、ラストマイル輸送や地場輸送、倉庫間の輸送などの用途に適している。