地形に海と山が多い日本の国土には、「ここが通行止めになると地域の物流路が断たれる」という、地域の生命線となる道路がいくつもある。
これらの道路は、数十キロも迂回路が無い谷間や、峠道、トンネル連続区間、断崖絶壁の海岸線など、交通の難所が多い。いっぽう、平野部を走る東名高速などの幹線でも、ひとたび通行止めが起こると周辺の道路に大量のクルマがあふれて大渋滞となり、地域の交通が機能不全になることがある。
最近は車両火災や事故、さらには自然災害による通行止めも多く発生している。いくつか事例をふり返り、1.通行止めを発生させない上手な道路の使い方、2.通行止めが発生した際の対処、について考えてみたい。
文/長野潤一、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、西日本高速道路、写真AC
*2024年9月発行トラックマガジン「フルロード」第54号より
日立市の常磐道でトンネル事故
7月18日未明、日立市の常磐道下り線、日立南太田IC~日立中央IC間のトンネル内でトレーラ3台による事故があり、10時間余り通行止めとなった。通行止めの影響で、18日午前中、日立市内の国道は通勤車両で激しく混雑した。
日立市は全国有数の工業都市であるが、山地が海岸線から約2.5kmの所に迫り平地が少ない。このため、普段でも通勤時間帯は渋滞が激しい。常磐道は山地側の高い所を通っており、トンネル連続区間となっている。この区間での事故や車両火災は地域への影響が大きく、何としても避けなければならない。
事故の状況は、まず1台が故障か事故で停止し、その後2台のトレーラがぶつかったと見られる。トンネルは片側2車線だが、故障車が退避する路肩のスペースは無い。もしトンネル内で故障やバーストで停車すれば、高い確率で後続車の追突事故を誘発してしまう。
ドライバーとして注意すべき点は、1.故障しないように点検整備をする、2.常に前方をよく見て運転する、3.自動ブレーキは過信しない、4.もし故障車がいても避けられるよう、並走や密集しての走行をしない、である。
さらに、このように片側2車線で路肩がほとんど無い断面の小さいトンネルは、国家の大動脈である新東名(愛知県内の片側2車線区間)にも混在しているので(臼子トンネル、観音山トンネルなど)、気を付けて運転しなければならない。
山陽道・尼子山トンネル火災
2023年9月、兵庫県の山陽道下り線、尼子山トンネルでトラック火災を発端とする車両23台の火災があった。トンネル内部の焼損が激しく、復旧工事による通行止めは102日間と長期化した。
これにより、並行する国道2号では交通量が倍増し渋滞が深刻化、多くのトラックが播磨道→中国道→岡山道という約90km増の迂回を迫られた。迂回先の中国道では、430休憩のためのパーキングエリア不足、GSの軽油給油制限などの問題も発生した。
また今年2月にも、新東名下り線北沼上トンネルでキャリアカー火災が発生、2車線規制による影響が長引いた。
令和4年のお盆、福井県分断
北陸道の今庄IC~敦賀IC間は、福井県の北部と南部(嶺北~嶺南、かつての越前と若狭)を結ぶ、地形の険しい区間である。過去何度も台風や大雪で交通遮断の危機に遭ってきた。
なかでも、被害が大きかったのは「令和4年8月4日からの大雨」で、北陸道、国道8号、JR北陸本線(当時)ほかすべての交通が遮断された。迂回路は東海北陸道や、東名経由で東北行き、日本海回りの長距離フェリーなど。
復旧工事がもっとも長くかかったのは大量の土砂が流入した北陸道下り線で、通行止め解除まで22日間を要した。国道8号は9日に通行止め解除となったが片側交互通行の区間があり、お盆の時期とも重なり、下り線を中心に10km程度の渋滞が発生した。
また、北陸本線の運休を補うべく、災害時緊急バス(無料)も運行された。
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