矢野特殊自動車がジャパントラックショー2024で初公開した最新大型冷凍ウイング車をレポート。新開発のオプション装備を満載し、保冷性能、積載性能を追求した同車両の特徴に迫ります。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年6月10日発売「フルロード」第53号より
新開発の3Dダクトでマイナス15度キープも可能に!
冷凍ウイング車は、冷凍車とウイング車の機能をミックスしたトラックボディで、1台で冷凍冷蔵品と常温品を運べるのが持ち味。行きに冷凍冷蔵品を運び、帰りはドライ品を運ぶ、という使い方ができるので、ユーザーの運用の幅が広がる。ただし保冷性能や積載量は冷凍車、ウイング車に劣る。
矢野特殊自動車がジャパントラックショー2024に出品した大型冷蔵ウイング車「マルチアクティブウイング」は、2022年に17年ぶりにフルモデルチェンジした新型チルドウイングに最新のオプション装備を盛り込んだものだ。
新型チルドウイングは、ハイエンドモデルの「アイスウイングXF」の構造体をスケールダウンしたもので、高性能断熱材の採用や、型材の素材比率の見直しによる熱伝導性の低減、パッキンの最適化による熱侵入対策などにより保冷性能を大幅に高めたもの。
昨年東京で開催された「ジャパンモビリティショー2023」には、この新型チルドウイングにオプション装備の「エアサーキュレーションシステム」を搭載したコンセプトモデルが出品されていた。
エアサーキュレーションは、エバポレーターの冷気の「吸込量」を制御するもので、バルクヘッド部分にエアサーキュレーションシステムのユニットを搭載することで、荷箱内の空気の流れを最適化。冷気がより荷箱全体に届く……というものだった。
一方、今回のトラックショーでは、エアサーキュレーションシステムの効果をさらに高める新開発のオプション装備「3Dダクト」が本邦初公開された。
3Dダクトは、エバポレーターの冷気吹出口に装着するノズル状のパーツで、装着することでエバポレーターから吹き出す冷気の風速がアップ。これにより冷気が届きにくい荷箱後方にも、しっかり冷気が届くというものだ。
矢野特殊自動車によると、冷凍ウイング車は冷凍車に比べて熱侵入/熱伝導が多く、断熱材も薄いため冷気を保持するのが課題だが、エアサーキュレーションシステムと3Dダクトの採用で、冷気の循環効率が大幅にアップし、0度帯をカバーするチルドウイングでもマイナス15度をキープすることも可能になるという。
なお3Dダクトは脱着式のため、背の高い荷物を積む際は外すことも可能。また、柔らかい素材を使っているので、万一、荷役中にぶつけても3Dダクトはもちろん、商品を傷つけにくいため安心だ。
小排気量エンジンの採用で12トンオーバーの積載量を実現
マルチアクティブウイングの開発は、UDトラックスとのコラボレーションで行なわれた。
ベース車両は大型トラック「クオン」のGVW25トン級4軸低床8×4車型CGまたは3軸高床6×2車型CDの大きく2種類で、7.7リットルのGH8型ディーゼルターボエンジン搭載車となる。
小排気量のダウンサイジングエンジン搭載車を採用するのは積載量を確保するためで、展示車両はサブエンジン式冷凍機を搭載した状態で最大積載量12100kgを確保し、冷凍ウイング車ユーザーの「ドライ製品を運ぶ際には12トンの積載量がほしい」という声にもしっかり応えている。
なお、同車両はUDトラックスの「準完成車」にも採用されており、一定数を先行して生産することで、即納車可能。販売は全国のUDトラックス販売会社を通じて行なわれるそうだ。
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