「モノの3割が運べなくなる」とまでいわれている「2024年問題」までもう幾許もない。一部の運送会社では、長距離の中継輸送、モーダルシフトの取り組みが始まっているが、まだまったく対策をしていないという運送会社が多いのも事実だ。
何しろトラック運送会社は日本に5万数千社、企業規模も大手からトラック5台の零細まである。対応が違っていて当然だろう。果たしてこの問題、どうなるのか?
トラックジャーナリストで現役ドライバーでもある長野潤一が、物流の諸問題を考察していく!!
文/長野潤一、写真/フルロード編集部・写真AC
*2023年9月発行「フルロード」第50号より
今年話題になったさまざまな問題
今年はさまざまな法制度やルール改変の話題が出た。それらをまとめてみたい。
まず、今年4月に施行されたのが月60時間超の時間外労働の割増賃金率アップ、いわゆる「2023年問題」だ。
しかし、「給料が上がった」という話は聞かないし、マスコミもあまり取り上げることがない。有名無実の制度になってしまったのだろうか?
次に、メインの「2024年問題」である。年間の残業時間の上限を960時間まで減らすというもの。
年間の総拘束時間は、現行の3516時間から3300時間(実際は3400時間)に減らされる。法律名は「働き方改革関連法」=「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」である。
これによって労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法なども改正される。
この「働き方改革関連法」の施行に関連して、具体的にトラックドライバーの労働時間を規定する「改善基準告示」=「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」も改正される。
令和4年(2022年)秋に内容がまとまり、12月改正。令和6年(2024年)4月1日に施行される。
次に、改正「貨物自動車運送事業法」。荷主に対する働きかけや、「トラックGメン」の設置などが要点だ。
また、高速道路料金では「深夜割引の走った分だけ」への変更や、「高速道路の大型トラック法定速度引き上げ議論」などの話題が出てきた。
「働き方改革関連法」時間外労働の上限規制適用迫る
「働き方改革関連法」は2019年成立だが、自動車運転職種では5年の猶予を持って2024年4月から施行される。これによる諸問題が、いわゆる「2024年問題」だ。
骨子は年間の時間外労働時間が960時間以内、月平均で80時間に減らされること(労使の合意がある場合は1060時間)。年間の拘束時間は3516時間から3300時間に減らされる(労使の合意がある場合は3400時間で、現実的にはこちらが基準になるだろう)。
しかし、この表現はいかにもわかりにくい。これをもう少しわかりやすくしてみよう。隔週週休二日制で年間有給休暇の消化が5日、盆正月休み各3日とすると、年間出勤日数は275日となる。
1日平均の拘束時間は、現行が12時間47分、改正後は12時間22分になり、1日当たりの拘束時間が約25分短縮される。
ここでの議論はすべて概算とはいえ、結果的には残業時間の短縮は約1割、総拘束時間に占める短縮の重みは3.3%に過ぎない。これで輸送力に大きな支障が出るかどうかは、甚だ疑問である。
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