トラックドライバーを魅力的な職業・職場にするためには?
実は、本誌「フルロード」では今から9年ほど前に、計11人のトラックドライバーさんに「トラックドライバーをもっともっと魅力的な職業・職場にするためには?」というテーマでお話を聞いたことがあります。
その中から2名のドライバーさんの話を抜粋してご紹介したいと思います(2014年9月発行「フルロード」第14号より)。
まずは、トレーラに乗っている迦月さんの話です。
物流の要であるトラック輸送は、ネット通販の増加もあって、重要な位置を占めているはずなのに、正直いって「末端労働者的立場だな~」と思うこともしばしば。
仲間内の運転手でよく話すことですけど、「年収を労働時間で割ったらコンビニ以下だよね」と、皆が口を揃えて言いますね。
女性で大型トレーラの運転手をしていると言うと、すごく稼いでいるように思われてしまうけど、現実はそんなに甘くないんですよねぇ。
トラックドライバーが稼げたのは昔の話。運賃は下がるいっぽうなのに、燃料や高速代等の経費は上がるいっぽうで、そうした事情は会社だけでなく運転手も直撃します。
ある程度の値上げは仕方ないにせよ、トラックの高速代の優遇措置は真剣に考えて欲しいところです。「高速乗り放題、すべて会社持ち」なんて職場はほとんどないのですから……。
それからこの仕事の拘束時間の長さも問題といえるでしょう。私はもう「そういうもんだ」と割り切っている(諦めているともいう)ので、さほど気にしていませんが、この業界に入ろうと思っている若い世代から見たら、唖然とする現実です。
今後のことを考えたら、これらの「業界の常識」は改善していくべきなんじゃないでしょうか。
こんな世知辛い現場の声を届けると、夢も希望も無くなってしまうけど、じゃ、なんで私はトラックの運ちゃんを続けているかといったら、やっぱりこの仕事だからこそ感じるやりがいや楽しさもあるわけでして……。
なんといっても楽しめるのは「全国各地あちこちに行ける」ということ。自分の生まれ育った土地とは違う街・風景・人に出会える楽しさは、日頃のストレスを仕事で解消していることに間違いありません。
どんな仕事にもよい面・悪い面それぞれありますが、仕事の中に楽しみを見出すことができれば、3K職場のストレスも多少はコントロールできるもの。だって私は、実に日々楽しーくお仕事させて頂いているんですから……。
とはいえ、物流がストップしたら日本中で大混乱が巻き起こるのは必至ですから、若い世代が見て二の足を踏んでしまう職場にならないよう、国からも待遇改善の後押しをして頂きたいものです。
若いドライバーを育てるためには労働環境の改善に取り組むことが急務
長距離トラックに乗っているひろしです。世の中不景気で就職先がないという時でも、運送業界は人手不足といわれています。原因として、「運送業は3K仕事。危険、キツイ、帰れない」などなど、負の部分を挙げればキリがないです。
きれいでカッコいいトラックに乗りたいとか、飾ったトラックで日本列島を走り全国の名産品を口にしたいとか、映画やテレビ、どこかの本で仕入れたような、いい部分しか見ずにトラック運転手になると、さまざまな壁に当たります。
荷物の手積み手降ろしといった肉体労働、長時間の運転で家に帰れない精神的疲労、事故時の破損代の支払いなど罰金的なもの……。こうして運送業界を辞めていく人々がいます。
自由で、給料がよくて、休みもあって……、これならば運送業界に人手不足って問題は起きないと思います。実際はハイリスク・ローリターンが現状です。
昨今の燃料高騰に加えて、大手荷主から子→孫→ひ孫と、下請け下請けで運賃ダンピングしてたら、休みなく仕事しても人並みの給料もらうのがやっとのことでしょう。
それだけ頑張っても事故を起こしたら事故代支払い……。寝ずに頑張った結果が事故で、会社に過料を支払わないといけないなど、世間でいう「ブラック企業」的な要素が運送業界に多いのも事実です。
運転免許制度の改定で初心者がトラックに乗り辛い状況にあるのも原因の1つにあるらしいです。じゃあ、免許制度を見直せばよいのか? 現実は違うと思います。
僕の友人の話ですが、運送業に転職するために一念発起して、大型・けん引の免許を取得しました。金額は50万円近くかかったみたいです。
お金と時間をかけ、やっとの思いで免許を取得し、ハローワークで運送業界の求人を探したところ、ほとんどが経験者募集。「未経験OK」と記入されていても、面接に行くと「経験が……」と言われたそうです。
会社の立場になって考えると、免許を持っているからといって、未経験者を即採用っていうのは現実的に考えて厳しいと思います。大手企業ならば、荷物の積み降ろし作業からスタートして、小型トラック、4トン、大型、トレーラとステップアップしていく教育システムもあるでしょう。
ですが、運送業界に大半の中小企業では、新人育成よりも即戦力となる経験者を雇うのが現実的です。中には中小でも「癖」の付きまくった経験者を雇うより、新人をイチから育成する方針って会社もあるらしいですが、少数派でしょう。
愚痴や文句をいえばキリが無いですが、トラック運転手の労働環境を改善しない限り、若い運転手は育たないと思います。
トラック輸送は国の経済を支えています。全員がプライドを持って仕事をしていても、それだけでは新人は育たない。少しでも労働環境が改善されたらいいなと思います。
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迦月さんやひろしさんが言うように、若い世代に次代のトラック業界の担い手になってもらうには、給料など待遇を含めた労働環境の改善が大前提。
そのためには適正運賃の収受をはじめ、トラック業界の積年の問題・課題に大ナタを振るって、本当に魅力ある業界にしなければなりません。
若い世代に向けてトラック業界の魅力を発信すること自体は否定はしませんが、トラック業界を言葉でお花畑に仕立てて「おいでおいで」をしても、今の若者はバカじゃありません、実際に魅力が無ければソッポを向かれるだけだと思います。
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