そんな手があったのか!! トラクタがけん引する「トレーラの電動化」で実現できることとは?

ハノーバーIAAで初の一般公開

同じくIAA2022に出品されたクローネの電動トレーラ「eメガライナー」。本来ならば側面にターポリン製カーテン、リア観音ドアなどを艤装するカーテンサイダーボディである
同じくIAA2022に出品されたクローネの電動トレーラ「eメガライナー」。本来ならば側面にターポリン製カーテン、リア観音ドアなどを艤装するカーテンサイダーボディである

 2022年9月、ドイツ・ハノーバーで開催された商用車ショー・IAA2022トランスポーテーションにおいて、クローネはこのeトレーラの実車を初めて一般公開した。それも、前述の低床カーテンサイダー3軸セミトレーラと同型の「eメガライナー」に加えて、冷凍機と断熱ボディを備えた冷凍バン3軸セミトレーラの「eクールライナー」も出品した。後者はトラクタの走行アシストだけでなく、冷凍ユニットも高電圧バッテリーの電力で駆動する。

 展示された「eメガライナー」と「eクールライナー」を比べると、トレーラの床下に設置される高電圧バッテリーの形状・サイズが異なっていたが、これはバッテリー容量が400kWhと600kWhで選択できるためである。高電圧バッテリーは、近年EVトラック・バスで採用例の多い中国・CATL製のLFP(リン酸鉄リチウム)電池を搭載する。車載充電器は交流44kWまたは直流350kWまで対応する。

 eアクスルは、連続出力360kW(489PS相当)/最高出力580kW(789PS相当)とかなり強力な動力性能を備えており、ド・ディオン式リジッドアクスルに、2基のモーター兼発電機を組み合わせて配置している。ド・ディオン式は三菱ふそう「eキャンター」も採用している懸架方式だ。

 なお、eアクスルは3つの車軸のうち真ん中の1本のみで、残り2本は通常のリジッド式のトレーラアクスルとなっており、各軸はエアサスペンションで支持される。

 トラクタとは独立したeアクスルの駆動制御は先進的で、TD社が開発したクラウドベースのリアルタイム先読み制御「プレディクティブ・ドライブトレイン・コントロール(PDC)」を用いる。これはルートと地形、交通情報、天候から、運行ルート全体での最適な電力収支を自動で策定し、eアクスルの駆動と回生に反映させるものだ。

 前述のとおり法改正がなければ販売できないため、供給時期は2024~26年頃としているが、クローネでは、eメガライナー・eクールライナー以外にも、「eプロフィライナー」(標準床カーテンサイダー)・「eドライライナー」(ドライバンボディ)など、長距離カーゴ系トレーラモデルに設定する。

価格と積載量が課題か

 eトレーラの価格についての情報は得られなかったが、総電圧800Vに達する電動パワートレイン、PDCがもたらす高度な走行制御など、その電動車技術は、欧米メーカーの大型EVトラックや日野「プロフィアハイブリッド」などの大型HVトラックに匹敵するような、かなり先進的なものだ。もちろんイニシャルコストも相応になるはずで、EU加盟各国で実施されているEV導入補助制度が適用されなければ、その普及は難しいとみられる。

 そしていうまでもなく、電動パワートレインを単純に追加すれば車両重量は増大する。そのため通常のセミトレーラと比べ、積載量が減ることになるだろう。ただし、ドイツなど一部のEU加盟国には大型EVトラック単車に対する車両総重量(GVW)の緩和措置(通常3軸トラックはGVW26トン→EVはGVW27トン)があるため、仮に同じような措置が適用されるならば「プラス○トン」が得られるのかもしれない。

 これらの条件(法改正や基準緩和を含め)から、日本でeトレーラに匹敵する電動トレーラが現れるかどうかは、率直にいえば、かなり厳しいところだろう。しかし、グローバルに展開しているティアワンサプライヤ(ZFやボッシュなど)でも、電動トレーラ用コンポーネントの開発が進められており、EV化が進むにしろエンジン車が継続されるにしろ、トレーラ連結車のCO2削減技術としては参考になるものと考える。

 なお、クローネ/TD社のeトレーラに対しては、ドイツ最大手の物流企業・DBシェンカーが2000台の導入計画を発表している。計画では24年からの運行開始を予定しており、実車を用いた実証運行試験はすでにスタートしている。

【画像ギャラリー】電動パワートレインを搭載する被けん引車「eトレーラ」の姿とその技術とは!(15枚)画像ギャラリー

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