事故の発生状況
以上のことから、災害は次のような状況で発生したものと推定された。
- 被災者はヘッドをバックでシャーシの前へ移動させ、ヘッドとシャーシを連結した。
- 連結の確認のため、エアサスペンションを作動させて車高を少し上げ、シャーシの脚を地面から浮かせた状態で軽く前進し、抵抗があることを確かめて確実に連結されていることを確認した。
- 電源ケーブルとエアホースの接続のため、運転席から降りた。このとき、シャーシ側はエマージェンシーブレーキが効いているので、ヘッドのパーキングブレーキを作動させなくてもクルマが動くことはなかった。
- ヘッドのキャビンの後ろにあるデッキに上がり、電源ケーブルを接続した。
- エアーホースのうち、サービスラインを接続し、次いでエマージェンシーラインを接続したところ、トレーラ全体が前方へゆっくりと動き出した。
- クルマを停めるためブレーキを掛けようと、慌てて運転席へ乗り込もうとしたところ、自車の運転席のドアと、右前方に停まっていた別のトレーラのシャーシの間に挟まれた。
トレーラの逸走という緊急事態
整理すると災害発生の原因として次のようなことが挙げられる。
- 連結確認のために軽くクルマを動かしたときに動かなかったため、パーキングブレーキを掛けずに運転席から降りたこと。
- エマージェンシーラインを接続したことによりシャーシのスプリングブレーキが開放され、下り傾斜によりトレーラ全体が動き出したこと。
- エマージェンシーラインを取り外すとシャーシのスプリングブレーキが効きクルマは停まるが、慌てていたためヘッド(運転席)に乗り込んで停めようとしたこと。
運転席から離れる時にはパーキングブレーキを確実にかけ、エンジンを停止し、輪止めをすることがなにより重要だ。
被災者は30年の経験を持つベテランなので、落ち着いて考えればエマージェンシーラインを外してトレーラを停めるということができたはずだ。しかし思わずクルマが動き出したときに、慌てずに行動するのは難しい。
トレーラの構造は普通のトラックとは異なり特殊であることから、運転操作以外のことについても必要な作業手順を定め、繰り返し教育を行なうことが必要だ。
また、経験の長いドライバーで、頭ではわかっていることであっても、緊急時など慌てていると、適切な措置がとれないことがある。とっさの判断ができるよう緊急時を想定した訓練を行なうことも有効だ。
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