年平均20％の急成長！　インドの建設・鉱山業界向けにダイムラーが新大型トラックを投入

　インドの建設・鉱山機械市場の拡大が続いている。現在は中国、米国に続く世界第三位の市場だが、年平均成長率が20％近くに達し、市場規模は今の160億ドルから2030年までに450億ドル（約6.6兆円）まで成長すると見込まれている。

　過熱するインド市場向けに、ダイムラートラックの現地法人、ダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークルズ（DICV）は「バーラトベンツ」ブランドから、インド市場向けの建設・鉱山用新型トラックを発売した。

文／トラックマガジン「フルロード」編集部
写真／Daimler Truck AG

「バーラトベンツ」の新型トラック

　ダイムラー・トラックは同社のインド子会社、ダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークルズ（DICV）の「バーラトベンツ」ブランドから、新たな大型トラックを発売したことを2025年8月5日に発表した。

　インドの建設・鉱山業界のニーズに合わせたもので、成長が続く同セグメントで更なるシェア拡大を目指す。

　バーラトベンツの「HX」シリーズは「2828C HX」と「3532C HX」の2モデルで、どちらも建設業界向けのパワフルかつ高効率な構成を特徴とする。「2828C」モデルは280 hp / 1100 Nm、「3532C」モデルは320hp / 1250 Nm のパワートレーンを備える。

　HXシリーズの全車が坂道発進補助（ヒル・ホールド・アシスト）機能を備え、メンテナンスの手間とコストを抑えるためにユニット化されたフロントアクスルベアリング、空力性能を改善するウィンドデフレクタ、高度なドライバーステータスモニタリング機能なども全車が搭載する。

　高い登坂能力（2828Cモデルで最大60％、3532Cモデルで最大54％）を保証するとともに、改善された新型リアアクスル（IRT440-11）が要求の多い建設用途でもパフォーマンスを発揮し、高荷重を支える。

　また、グラウンドクリアランスを確保するためアプローチアングルを最適化し、あらゆる困難な地形に対応したという。

　いっぽう、「トルクシフト」シリーズでは「2832CM」と「3532CM」モデルで、グローバル市場において実績のある自動化トランスミッション（G211-12 パワーシフト3）を搭載した。さらに、コンクリートミキサ車として新たに「2828C レディミックスコンクリート（RMC）」モデルを追加した。

　2828C RMCのミキサ容量は9立米で、280hp / 1100 Nm を発揮するOM926型エンジンを搭載する。同機はインドの排ガス規制「BSVI」（欧州の「ユーロVI」相当）と「OBD-II」（排ガスシステム対応の車載式故障診断装置）に対応する。これにより厳しい地形でも安心してコンクリートの輸送が可能になる。

インドはダイムラーの一大生産拠点に

　DICVは全ての新型モデルに対して、インド国内の建設現場や鉱山などでカスタマートライアルを実施した。このトライアルは複数の顧客のもとで、150台のトラックを用いて行なった大規模なもので、稼働率の向上、運行効率と利益率の改善を確認したそうだ。

　バーラトベンツはダイムラートラックのインド市場向けブランドで、メルセデスベンツ・トラックスの一部。2012年に当時のダイムラーグループの商用車部門の一部として創設され、総重量9トンから55トン級のトラックを提供している。

　車両はインド亜大陸の輸送・建設セクターのニーズに合わせて設計され、全ての車両がインド国内で製造されている。パーツ・コンポーネントの多くもインドのサプライヤから調達する。

　チェンナイ近郊のオラガダムに工場があり、テストコースや研究開発・トレーニングの拠点も備える。

　バーラトベンツの一部の車両は同じダイムラートラックグループに属する三菱ふそうにルーツを持つものもあり、オラガダム工場では「メルセデス・ベンツ」や「FUSO」（三菱ふそうの海外向け車両）、「フレイトライナー」などグループ各ブランドのノックダウン生産も行なうなど、ダイムラートラックの世界戦略においても欠かすことができない一大生産拠点となっている。