豊富なバリエーション
デュカトをはじめとするGVW3.0~5.0トン級LCVには、たいてい三つのボディ形態が設定されています。一つはパネルバン(サイドガラス仕様や貨客兼用モデルもある)、二つめはキャブ付シャシー(トラック型モデル)、三つめがバスです。
それぞれ積載量、ホイールベース長、ボディ全長、ルーフ高、エンジン、駆動方式など豊富なバリエーションから、用途にマッチした組み合わせが選べるようになっており、最近ではEVモデルも設定されるようになってきました。
また、キャブ付シャシーはボディ架装を前提とした形態なので、ダンプや冷凍車といった特装車から、キャブ・コンバージョン型キャンピングカー、バス車体メーカーによる本格的なバス架装車まで、さまざまな応用が可能になっています。
いまのところ日本で発売されるデュカトは、パネルバン3機種(L2H2/L3H2/L3H3)です。このL●H●とは、ミディアム(L2)とロング(L3)のホイールベース長と、ハイルーフ(H2)とスーパーハイルーフ(H3)のルーフ高さを示す符号を組み合わせたものです。また日本仕様のパワートレインは、2.2リッター180psディーゼル・9速ATのみの設定です。
デュカトとその仲間たち
フィアットは現在、グループPSA(プショー、シトロエンなど)とともにステランティス・グループを形成していますが、その以前からPSAとは、LCVで協業してきた関係(1970年代から!)があり、デュカトも1981年の誕生当時から、PSAの同級車とプラットフォームを共有してきた歴史がありました。
もちろん現行モデルも同様で、プジョーのGVW3.0~5.0トン級LCV「ボクサー」と、シトロエンの同じく「ジャンパー」は、デュカトと基本設計を共有するLCVとなっており、ホイールベース長やボディ長、ルーフ高のバリエーションは同じです。そして3モデルとも、イタリアのヴァル・ディ・サングロ工場で生産されています。
もっとも、デュカトとボクサー/ジャンパーは、完全に同じクルマかというとそうでもありません。フロント周りのデザインが違うのはOEMでもよくありますが、デュカトおよびボクサー/ジャンパーは、エンジンが異なっているのです。
デュカトとボクサー/ジャンパーは、ともに2.2リッターのEuro-6ステージE排ガス規制適合ディーゼルエンジンを搭載していますが、デュカトは内径83.8mm×行程99mmの直4で排気量2184ccの「マルチジェット3」エンジンを、ボクサー/ジャンパーは内径85mm×行程96mmの直4で排気量2179ccの「ブルーHDi」エンジンを、それぞれ搭載しており、パワーレンジこそ120ps・140ps・160ps(フィアット)または165ps(PSA)と実質的に同等ですが、最大トルクとピークトルクの発生回転数などは違っています。
さらに言えば、デュカトとボクサー/ジャンパーに設定されるEVモデルも、高電圧バッテリーの構成やモーターの出力、そして航続性能がそれぞれで違っているのです。
エンジンの違いは、ステランティスという企業連合が成立して、まだ日が浅いことも理由だと思われますが、もしかしたらいずれは伊・仏メーカーでパワートレインの大統合…という事態もありえるでしょう。
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