大型商用車で世界的な大手となっているトレイトングループは、スカニア、MAN、インターナショナル、フォルクスワーゲン・トラック&バスなど傘下ブランドの研究開発部門を結集した「グループR&D」を新たに組織した。
グループで共有するモジュラーシステムの開発を進め、「100年に一度」と言われる変革に対応するため、商用車業界における研究開発の迅速化と効率化を目指している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/TRATON SE・Scania CV AB・MAN Truck & Bus・VW Truck & Bus
トレイトンがブランドを横断する研究開発部門を組織
フォルクスワーゲンの商用車部門であるトレイトングループは2025年7月1日、傘下ブランド間のコラボレーションにおける新たな取組として、各社のエンジニアなど研究開発を担う人材を集めた「グループR&D」の稼働を開始したと発表した。
トレイトンにはスカニア(スウェーデン)、MAN(ドイツ)、インターナショナル(米国)、フォルクスワーゲン・トラック&バス(ブラジル)など、世界的な有力商用車ブランドが所属している。
これらの各ブランドの研究開発部門(R&D部門)の人員は、大部分がグループR&Dに結集することになる。新たに組織したグループR&Dを率いるのは、トレイトングループの研究開発担当執行役員のニクラス・クリンゲンベルク氏だ。
グループR&Dの人員規模は9000人となるいっぽう、各ブランド固有の研究開発を行なうブランド・アイデンティティ開発(BID)は3000人規模となり、グループとブランドの研究開発部門が緊密に連携しながら継続的なイノベーションとブランドの成功に貢献するという。
新部門を率いるクリンゲンベルク氏は次のようにコメントしている。
「研究開発における緊密な連携により、今後私たちはさらに迅速かつ効率的に働くことができるようになります。ターゲットを絞った開発を通じて、より精確なイノベーションを、より早く市場に投入します。
このアプローチは業務の重複を回避するとともに、トレイトングループの全ブランドが、お客様の多岐にわたるニーズに合うよう、製品ポートフォリオを常に最適にカスタマイズすることを可能にします。
新たに組織されたグループR&Dにおいて、すべてのエンジニアと人材は、トレイトングループの明るい未来を築くために不可欠な存在です。私たちの成功は、研究開発部門に所属する彼らの専門知識にかかっています」。
トレイトングループはこれまでもディーゼルエンジンの共同開発などでブランド間コラボの実績がある。現在グループ各社が展開している最新型の13L級エンジンは、トレイトングループの共通ベースエンジンを活用しているが、これはスカニアの新型エンジン開発プロジェクトに起源を持つものだ。
今回の再編を経て、グループとしてモジュラーシステムをこれまで以上に活用したい考えで、今後は様々なブランドが共通して利用可能なモジュラーコンポーネントの開発に重点を置く。同じ技術が異なるパフォーマンスを発揮することで、複雑化する顧客ニーズに柔軟に応えて行くことを目指している。
また、グループR&DとBIDの連携が進展することでトレイトンのモジュラーシステムの開発が加速するとしており、これにより持続可能で効率的、そしてコネクテッドな輸送ソリューションを市場に提供することを目指すという。
商用車業界では、日本国内でもいすゞによるUDトラックスの子会社化や、三菱ふそうと日野自動車の統合で親会社のダイムラーとトヨタが合意するなど、規模の追求が進んでいる。100年に一度といわれる変革に対応し、合理的な開発を進めるため、研究開発のリソースを合わせて大規模化する取り組みは今後も続きそうだ。
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