もっと条件のいい会社はあったけれど、今の会社にいる理由【ひろしさん】
まずは僕の社歴から話していきたいと思います。高校を卒業してから某集配路線系の運送会社に就職しました。基本給+やった仕事の歩合制、やはり歩合制というのは自分の頑張りが給料に反映されるのでやりがいはありました。
大手だったのでボーナスあり、退職金あり、諸々手当てありだったので、高卒の給料としては年収ベースで考えてもそこそこ貰えてたんじゃないかと思います。
しかし日々の集配業務と、2t車で担当地区から出ることのない仕事内容に飽き飽きしてきた僕は、もともと大きいクルマに乗りたい願望と長距離を走りたい願望があったために、2年半ほどで退職することになりました。
それでも退職金は貰えましたし、福利厚生といった部分ではよい会社だったと思います。長く働くなら年々基本給がベースアップする、このような会社がよいと思います。
長く勤めてベテランになれば、会社での居心地もよくなるでしょう。毎日家にも帰れますし、基本給のベースも上がりますし……。年齢と経験を重ねた今だから言えることだとは思いますが、今ならこうした会社での勤務も続いていたかもしれません。
次に働いたのは某引越屋、ここも大手で、高校生の頃にバイトしていたので人間関係等の居心地は最高によかったです。給料システムも基本給+歩合制。やはり運送会社にはこのシステムは必須だと思います。自分の頑張りが給料に反映されるのとされないのでは、やる気も違ってきますからね!
この会社では現場の西日本ブロック長にまで登りつめました。西日本エリアに新しい営業所を立ち上げる時とかは指導員として尽力しましたが、 特にブロック長手当てがあるわけでもなく、出張手当てがあるわけでもなく、月の給料はそこそこ貰えていましたが、ボーナスはお小遣い程度。
現場で登りつめた僕に次のステップとして、事務所に入る話が出てきました。まだ20代半ばだった僕は現場に拘りがあり、大型にも乗りたいし長距離にもまだまだ出たい気持ちが強く、事務所入りを拒否して転職することにしました。
この会社はバイト時代も合わせると、足掛け12年近く在籍しましたが、退職金はありませんでした。このあたりから「退職金って何?」って感覚になってきました。
そこで今の会社に転職するわけですが、今の会社に入るきっかけは、引越屋時代の長距離中に「あそこのトラック、カッコいいなぁ」って思ったという単純なものでした。そこで、たまたま求人募集があったので面接に行って採用されたって流れです。
長距離専門の会社に入社したものの、最初はものすごく戸惑いました。集配の会社だと朝出勤して仕事が終われば帰る。日曜は休み。引越屋も朝出勤して仕事が終われば帰宅しますが、土日祝は忙しいので休みは平日(ただしある程度の予定はわかる)。たまに長距離に出る。こんな感じの勤務内容でした。
長距離専門だと積み込み、荷降ろしの時間を逆算して会社に行きます。出発時間は自分で決められるので会社に行く時間はまちまち、荷降ろしが終わって、予定がなければ帰れる。不規則を絵に描いたような勤務内容です。そもそもタイムカードって概念がありません。
最初は超不規則な勤務内容で、家族ともども戸惑いの連続でしたが、慣れてくると自分のペースで時間が使えるし、「休み」って概念を違う視点で見るようになります。
例えば普通の仕事で9時~18時の勤務だとします。勤務後から翌日が休みで、翌々日の出勤時間まで約35時間あります。長距離の会社だと丸1日休みっていうのはあまりないけど、荷降ろし後から次の積み込みまでの空き時間を「半ドン」休みと考えると、休みの日数は違えど時間換算にしたらそこまで変わらないかな、と。
勤務内容は過酷に思えますが、慣れれば何の問題もありません。在籍して20年超になりますが、この先もこの会社がある限り辞めることはないでしょう。
今の会社の給料システムについて明細上は基本給だの何だのかんだの記載されていますが、完全歩合制です。ちなみにボーナスも退職金もありません。中小零細運送会社で働く以上、そこはしょうがないことだと諦めています。
ボーナスも退職金もないようなブラック気味のところで働くのか疑問に思ったり、「こいつアホだな?」って思われるでしょうが、この会社は居心地が最高です。希望休みなどいろんな面で融通が効くし、トラックもカッコいい。完全歩合なので頑張りが反映される。
「いい年してトラックがカッコいいとか、中二病か?」って笑われるかもしれませんが、自分の乗るトラックって命を乗せて走る相棒ですし、長距離だと自宅よりも長い時間を過ごすことになりますので、時間があれば手入れして綺麗な状態を保つようにしています。
何人かでトラックを乗り回しする会社もありますが、自分の専用車に乗るほうが手入れも行き届き、不具合が出た場合にすぐに気づくことができるので、クルマの維持という面でもトラックに愛着を持つ気持ちは大事だと思います。
長く働く上で大事なことって給料はもちろんですが、居心地の良さであったり、人間関係であったり何を一番に持ってくるかは人それぞれです。ボーナスや退職金が欲しいなら大手運送会社で働くのもいいでしょう。大手は福利厚生などしっかりしている半面、規則が厳しかったり、キツい面もあると思います。
うちの会社でもつい最近、僕より長く勤務していた人が大手運送会社に転職しました。その人の転職理由が「長距離に飽きた」だそうです。20年以上も長距離走っていると、トラックでの車上生活に嫌気がさすのもわかる気がします。確かに僕も長距離が日常生活なので、多少の飽きはあります。
「ご当地の~」とか「どこのSAが~」とか「富士山が~」とか、長距離走り始めの頃に感じていた新鮮さはなくなってきています。
ちなみに会社が変わって完全長距離から完全地場に下りたその人は、毎日家に帰る生活を手に入れたようですが、それも飽きてきたそうです(笑)。人間無いものねだりの生き物なので、辞めてみないと気づかないことも多いのでしょう。
僕のようにトラックが好きで運送業をやっている人間も多いと思います。この手の人間は働くことが苦にならないと思いますし、お金のために運送業をやっている人間は労働時間や拘束時間など、いろんな意見があると思います。
仕事したい人間は働けばいいし、休みが欲しい人間は休めばいいだけの話で、柔軟な働き方ができればいいのであって、「運送業界全体が働きすぎだから働く時間を短くしろ」なんて政府が決めつけるのは違うんじゃないかな? そこで働いている運転手の気持ちを理解しているのかって思います。
働き方改革でもいろんな働きかたの選択肢を認めて欲しいと思います。うちの会社は、よくある中小零細の下請け運送会社で、確かにボーナスも退職金もないですが、人間関係と居心地の良さだけはズバ抜けていいと思います。
僕の思う「長く勤められる会社」は、給料や将来性はもちろん重要だと思いますが、やはり人間関係と居心地の良さが一番だと思います。この考えが正しかったのか、間違いだったのかは、10~20年後にわかることでしょう。
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コメント
コメントの使い方大型トラック運転手始めて30年になりますが、理想なんて事は皆無。「その日暮らし」って言う言葉がしっくりくる環境で仕事してました。
今じゃ、拘束時間だ、運転時間だ、430だって法令遵守した運行になって、稼げる仕事も稼げない。
昔と今は違うだろうけど、運転手を始める環境にはなって居ないのでは。
賃金形態や勤務形態、比例する時代じゃなくなったもんな。