環境問題などを背景に、ずいぶん前から「モーダルシフト」(トラック輸送から船舶・鉄道による貨物輸送への転換)が提唱されてきました。
ただ、集荷・配達などラストマイル輸送のためには結局トラックが必要になり、余分な手間が発生するなどの理由から、国内ではいまいち進んで来なかったの実状です。
最近は、トラックドライバーの人手不足や長時間労働といった問題があり、再びモーダルシフトが注目されています。東京港を中心に、フェリーと連携してあらゆる台車をけん引する内航ドレージドライバーのヒデさんに、知られざるドレージ屋さんの一日を語ってもらいました。
文・写真/ドレージドライバー・ヒデさん
遠方のナンバーを付けたトレーラ
自分の住んでいる街で、遠く離れた地方のナンバープレートを付けたトレーラを目にした事はありませんか? 私自身も室蘭や福岡のナンバーを背負ったトレーラを引っ張って、初めての客さんを尋ねると「随分遠くから来たんだね!」といわれる事があります。
しかし実際には、そんなに遠くからトレーラを引っ張ってきたわけではありません。ここで、私が携わっている「内航ドレージ」について説明したいと思います。
ドレージとは、物流用語で港に陸揚げされたコンテナ(台車・トレーラ)を、頭(トラクタヘッド)と繋ぎ、目的地まで陸送すること。輸出入の海上コンテナがイメージし易いかと思いますが、国内でも遠方地を結ぶ海上輸送は今も昔も盛んに行なわれています。
東京から北海道、九州・沖縄等、私が主に仕事をしている東京でも、数多くのフェリーが航行しております。船から下りてきた台車を引っ張って配達して、また遠方地へ送る荷物を集荷して船に載せるというのが内航ドレージ輸送の仕事です。
何故わざわざ船に載せて輸送するのか? 「モーダルシフト」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
内航ドレージ輸送において、輸送区間は片道500km以上のいわゆる長距離輸送に当たります。地球温暖化対策の一貫として企業にはCO2の削減義務が有り、陸上輸送で発生する大量のCO2をフェリー輸送に代替させる事により大幅に削減する事が可能になります。
しかし、船では港から港までしか運べないため、トレーラにより配達・集荷を行なうのです。
トレーラ輸送の最大の利点は、けん引車(トラクタ)と被けん引車(トレーラ)を切り離しできることです。この利点をうまく利用し、台車だけを船で無人航送することによって、燃料高騰や労働時間など様々な問題を解決する事ができるため、昨今ドレージ輸送の需要が高まっています。
ドレージ輸送のデメリット
しかしデメリットもあって、船は出港時間が決まっており、悪天候にも弱いです。昨今のフェリーは大型化され、昔に比べると悪天候にも強くなったとはいわれますが、やはり台風クラスの暴風には勝てません。
そういった場合、時間の繰上げで「出航時間に荷が間に合わない!」なんて状況が稀に発生します。時間に間に合わなければ延着扱いとなり、当然載せる事は不可……。
船枠が空いている場合、余程急ぎでなければ翌日の船に差替えとなり事なきを得ます。
しかし急ぎの場合や、そもそも時化で出港できない場合は、「追っかけ」と言う陸送手段を取ることがあります。追っかけは文字通り船枠が空いている船を見つけて、その船を追いかける形で、停泊する港まで台車を持って行く事です。
場合によっては目的地までひた走る事も普通にあります。昨年だけでも新潟港、大阪南港、九州博多港(4回)まで走りました。元長距離運転手の私としては追っ掛けは運賃も良いので大好きなのですが、陸送するとやはり経費が嵩みますので、荷主としては究極の場合のみです。
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