長野潤一のトラッカーズアイ

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山陽電鉄で起きたキャリアカーの踏切事故を検証する その1

2月12日、兵庫県高砂市の山陽電鉄の踏切でトラックと特急電車の衝突事故が発生してしまった。電車は脱線、電車の運転士や乗客ら計15人が重軽傷を負った。
こうした事故が発生すると、いつも「安全運転の気を引き締めなければ」と思ってしまうが、果たして個々のドライバーの注意だけで事故は完全に防げるものだろうか?
危ない踏切
報道によると、事故が発生した荒井駅近くの踏切は、交差点までの距離が13mしかなく、トラックの全長は約9m、前に乗用車が1台いたという。踏切を渡り始めてから前の乗用車が信号で止まったとすると、トラックの後部は踏切内に取り残されてしまうことになる。過去1年で(2012年度)遮断棒が折られる事故が3回もあり、交通量も多い、危ない踏切だった。もちろん踏切での運転は、先に自分が入れるスペースが出来たことを確認してから渡り始めるというのが鉄則だ。だが、トラックドライバーの運転というのは、概して先を急ぎがちなもの。なかなか進まない信号などで強引に突っ込む場面も、決して容認されるものではないが、珍しくはない。しかし、こと踏切となるととんでもない大事故につながりかねない。普通の交差点と危険性がまったく違うということを肝に銘じておかなければならない。
車種が招いた? 不運
今回事故を起こしたトラックは、自動車運搬用のキャリアカーで中型車(総重量8トン未満)だった。運転手は事故後、かなり気が動転していたようだが、電車が衝突する直前、遮断棒が引っかかった荷台後部の自動車積み込み用のスロープを線路側に倒して、踏切からの脱出を試みたという。この行為があだになったのではないだろうか。スピードの出ていた特急電車がこのスロープ(金属板)に乗り上げ、大きな脱線の原因になったのでは? もしスロープを降ろさなければ、キャリアカーの荷台後部は骨組みだけで非常に軽いため、トラックは弾き飛ばされるが、脱線には至らなかったのではないか。結果を見て他人の行為を批判するのは適当でないかも知れないが、万が一踏切に閉じ込められたら、遮断棒を折ってでも脱出する、それでもダメなら発煙筒で知らせるというのが身を守る方法なのだろう。
ところで、踏切の重大事故として思い出すのは、1999年10月12日 埼玉県狭山市の西武新宿線の踏切で、大型トレーラー(キャリアカー)と電車が衝突した事故だ。この踏切も信号のある交差点が近く、前が渋滞してトレーラーが渡りきれなかった。車種はこのときもキャリアカー。これは因縁だろうか?  (つづく)

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事故の模様を伝えるフジニュースネットワークの画面より

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