トラックドライバーが語るゲリラ豪雨の恐怖! 「木曽路はすべて山の中」で立ち往生を経験

トラックドライバーが語るゲリラ豪雨の恐怖! 「木曽路はすべて山の中」で立ち往生を経験

 いよいよ台風シーズン到来。今の時期は梅雨前線が刺激されて集中豪雨となるなど、特に油断ができません。

 異常気象にはトラックドライバーも困り果てています。これは、梅雨時の木曽路でゲリラ豪雨に遭遇したベテランドライバーのDKさんが語る体験談です。

文/トラックドライバーDKさん、写真/「フルロード」編集部、写真AC
*2023年12月発行トラックマガジン「フルロード」第51号より

梅雨の木曽路でゲリラ豪雨に遭う

中津川市から塩尻市を結ぶ木曽路。江戸五街道のひとつ中山道の一部でもある
中津川市から塩尻市を結ぶ木曽路。江戸五街道のひとつ中山道の一部でもある

 国道19号線(通称「木曽路」)を中京方面から長野方面に向かうと、恵那から中津川付近の4車線帯を過ぎて、左側に「夜明け前」という店の看板が見える。島崎藤村は同名の長編小説で「木曽路はすべて山の中である」と書き出したが、現代でもかくのごとし。この看板を過ぎ、落合川の水色の橋を過ぎると景色は一変、山に入る。

 梅雨の蒸し暑い日、大型トラックに乗務していた私は、滋賀県でアパレル商品を満載し、群馬県へと向かっていた。夕刻に中津川を通過したころには、雨は降っていなかったと記憶しているが、木曽路の山に入ると、たちまち雨が降り始める。梅雨時から盛夏にかけて、この辺りは夕立が多い。いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれるような集中豪雨が毎日のように降る。

 雨脚はだんだんと強くなる。山口ダムの横、トンネルを抜けたオービスの先で車列が止まった。止まってしまったらまったく進まない。遮蔽物の少ない左カーブで随分前が見えているけれど、トラックが連なり、まったく動く気配がない。しばらく対向車も来ない。この先で事故か何かがあったと考えるのが、妥当と思えた。

 こうなってしまってはどうしようもない。ハンドルに足を上げて、「あみん」を口ずさむ。途中で小型車が諦めてUターンしていくのか、わずかに前が進む。やがて国道256号線との三叉路の手前まで来た。この交差点なら、大型トラックでもUターンができなくはない。実際、目の前でそうして戻っていくトラックがいる。

 信号の停止線まで3台目か4台目まで来た。前の数台は動く様子がない。私は右に出て、交差点を右折した。国道256号線は清内路を抜ける道。中央道の恵那山トンネルで通行止めがあると、う回路になる峠道で、これを抜ければ伊那路に至る。

 木曽路も山の中だが、その間道である清内路はさらなる山の中だ。道幅は片側一車線で大型トラックも通れる幅員だが、つづら折りで、勾配がきつい。定量近く背負って走るのは億劫だ。非常の際以外通りたい道ではないが、今がその非常の時である。

非常時の決断 吉と出るか凶と出るか?

 相変わらず雨脚は強い。黒いキャビンの4t車が1台着いてきた。左手の斜面から、水が滝のように流れている所があり、小規模な崖崩れが起き、道に土砂が散乱している箇所がある。

 妻籠宿を過ぎた先で、目の前の道が土砂で塞がれていた。これはダメだ。普通の大型トラックでは突破できない。ドアを開けて、後ろの運転手に向かって「×」のジェスチャーを送った。後ろの運転手は、窓から身体を覗かせてみるとスゴスゴとバックしていった。私も続いてバックして、なんとかUターンしてもと来た道を戻る。

木曽路などの山間の道は大雨が降れば土砂崩れが発生しやすい
木曽路などの山間の道は大雨が降れば土砂崩れが発生しやすい

 木曽路の信号まで戻ったころには雨脚が弱まった。信号を左折し、中津川方面に戻る。反対車線(長野方面)はどこまでもトラックの列が続いている。それを横目に中津川インターまで戻って、中央道に乗った。

 平成26年7月9日、長野県木曽郡南木曽町三留野宿梨木沢において、台風8号に伴う集中豪雨で土石流が発生した。この土石流により多数の人家が被災し、死者1名、負傷者3名、また全半壊住宅13棟の大規模な災害となった。同時に、三留野宿の被災箇所を通過する国道19号線、JR中央本線も被害を受けた。

 その後数日間、国道19号線の当該区間は通行止めが続いた。平行するJR中央本線の運休はひと月近くに及んだ。あれからい何年も経つが、三留野から見える木曽川河原には巨大な流木があり、その残滓が見える。

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