日本の物流の基本方針「総合物流施策大綱」が閣議決定! 2030年度までを物流革新の「集中改革期間」に!

環境の変化を踏まえて新たな方向性

日本の物流の基本方針「総合物流施策大綱」が閣議決定! 2030年度までを物流革新の「集中改革期間」に!
大規模な物流拠点を設ける事業者も……

 トラック運送業の構造的な課題として、いわゆる水屋(トラックを持たずに、運送業務を再委託することで利益を上げる利用運送会社)による「多重下請構造」や、劣悪な条件で仕事を受け過積載等の違法行為で利益を上げる「運賃ダンピング」、事業許可を受けずに有償で運送行為を行なう違法な「白トラ」など、長年にわたり蓄積してきた悪弊がいまだに残っている。

 前大綱の策定以降、「物流革新に向けた政策パッケージ」、「物流革新緊急パッケージ」、「2030年度に向けた政府の中長期計画」などが閣議決定された。主に荷主側を対象とした「改正物流法」(2024年)や、トラック事業者側を対象とした「トラック適正化2法」(2025年)が成立し、荷主と運送業界の双方から構造的課題に対処し健全化を図る体質改善が進められている。

 荷主・物流事業者には効率化に向けた努力義務が課されるとともに、実運送体制管理簿の作成や運送契約の書面交付が義務付けられた。さらに「標準的運賃」や「標準運送約款」の改訂、「トラックGメン」の改組・拡充(トラック・物流Gメン」に)なども行なわれた。

 いっぽう前大綱下では、新型感染症の流行、ロシアによるウクライナ侵攻、紅海・アデン湾での船舶攻撃、ホルムズ海峡の封鎖などグローバルなサプライチェーン全体の脆弱性と、国際物流ネットワークのリスクが顕在化した。従来の輸送手段やルートを代替・補完する多元化・強靭化を進めなければならない。

 こうした環境の変化と取り組みの効果を踏まえ、追加的な取り組みの基礎となる将来的な輸送力見通しの再検証が行なわれた。

 2030年度に想定された34%の輸送力不足のうち、約14%は取組の成果で概ね克服することができたが、一部では輸送の制限がみられるなど輸送力がひっ迫している状況に変わりはない。さらに、2030年度までの輸送力不足を乗り越えても、少子高齢化が進行する限り更なる輸送力不足が見込まれる。

 従って、2030年度までを物流の「集中改革期間」と位置づけ、抜本的かつ計画的な対策を講じることで、将来にわたって物流の持続可能性を確保していくことが求められる。

 こうした認識のもと、新たな大綱が目指すべき今後の物流政策は次の5つの観点に整理された。

●サービスの供給制約に対応するための徹底的な物流効率化
●物流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容、産業構造の転換
●持続可能な物流サービスの提供に向けた物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善
●物流に携わる多様な関係者の連携・協力による物流標準化と物流DX・GXの推進
●厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応したサプライチェーンの高度化・強靱化

取り組むべき施策

日本の物流の基本方針「総合物流施策大綱」が閣議決定! 2030年度までを物流革新の「集中改革期間」に!
自動運転トラックやダブル連結トラックなど自動化・省人化を進めなければならない

 物流の担い手不足は日本に限った現象ではなく、世界各国に共通する課題である。昨今、物流分野における自動運転技術の導入が世界中で加速しており、米国や中国では既にレベル4自動運転トラックの商用運行が実現している。

 国内では新東名高速道路などで実証実験を行なっている段階だが、制度上はレベル4の自動運転も可能となっている。

 自動運転トラックは交通・運転ルールに基づく「ルールベース」だけでなく、機械学習により高度な自動運転技術を実現する「AIベース」の車両も登場しており、事業化に向けた社会実装の加速や、対応する物流拠点の整備を促進する必要がある。

 自動運転技術は、トラックドライバー不足への対応に加えて、運送業の労働生産性を向上するという観点からも可能な限り早期に実装すべきとされ、大型トラックだけでなくセミトレーラ等での実用化も見据えて支援や検討を進めるとともに、必要に応じて制度の見直しを図るという。

 ただし、自動運転トラックの社会実装が進んでいく中にあっても、エッセンシャルワーカーであるトラックドライバーの役割は引き続き重要とされた。

 また、1台で大型トラック2台分の輸送が可能となるダブル連結トラックでは、連結装置をはじめとする車両の規格化・標準化に向けた検討を進め、標準化された車両では運行に係る手続きの合理化を進める。併せて自動運転トラックやダブル連結トラック等の乗り入れが容易となるように施設整備を推進する。

 中継輸送はトラックドライバーの過労運転を防止しつつ、安定的な物流を維持するために有効だが、中小事業者が取り組むには複数の事業者間でコンテナやトレーラのシェアリングを行なうためデータ連携基盤の構築が必要となる。荷役と輸送の分離はトレーラのほかスワップボディコンテナによっても実現でき、効率向上に資するため、コンテナの着脱・一時保管が可能な物流拠点の整備等を通じて普及拡大を図る。

 運送事業者は荷主から運送業務を請け負う立場であるため、独自に効率化を図ろうとしても実施が困難な場合も多い。引き続き荷主・消費者の意識改革を促し、行動変容を図るとともに、新たな商慣行を定着させなければならない。

 国内の輸送モードにおいてトラックは、トンベースで9割、トンキロベースで5割を占める。それを支えるトラックドライバーはまさにエッセンシャルワーカーなのだが、その待遇は長時間労働・低賃金となっている。物を運ぶという仕事は新たな付加価値を提供するサービスであるべきだが、実際にはコストとみなされ、圧倒的に弱い取引構造のもと運賃が低く抑えられている。運賃はドライバーの賃上げの原資であり、適正な運賃を収受できる環境を整備する必要がある。トラック適正化2法の円滑な施行とともに、産業全体で適正取引のための取り組みが求められている。

 外国人材が注目されているが、女性、若者、高齢者、障がい者等、多様な人材の労働参加を促すとともに、離職率の低下につなげるため職場環境の整備等に取り組むことも重要だ。

 特にトラックドライバーが休憩するための駐車場がない問題は深刻で、SA・PAの大型車駐車枠の拡充、短時間駐車マスの整備、出発時間別縦列駐車や駐車容量を最大化できる複数縦列式駐車場の検討など、ドライバーが確実に休憩できるような取り組みを推進する。

 日本のCO2排出量の19.2%を運輸部門が占めている。2023年度時点で、2013年度比で約15%の減少となったが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けては更なる取り組みが必要。運輸部門の排出の4割は商用車であり、電動化やバイオ燃料の使用を推進する。EVや充電設備の導入支援のほか、中小企業の投資余力を考えれば軽油の代わりにそのまま使える(ドロップイン燃料の)リニューアブルディーゼルや合成燃料を活用することも重要となる。

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