トラック電動化で中国メーカーが欧州で躍進!? サニーが物流用の電動トラクタを市場投入

トラック電動化で中国メーカーが欧州で躍進!? サニーが物流用の電動トラクタを市場投入

 中国の三一トラックは物流用の大型BEVトラクタで欧州市場に参入することを発表した。世界的な建機メーカー・三一重工の子会社である同社は、同グループに属するプツマイスター(ドイツ)の支援を受け、建設用トラックでは既に欧州市場に参入している。

 世界で4万台が稼働中という実績による安全性と、欧州車を圧倒するTCOの低さを訴求している。電動化を契機に中国メーカーが躍進する構図は乗用車では既に通った道だが、商用車でも同じ轍を踏みそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/SANY Trucks

中国メーカーが欧州の物流用トラックに参入

トラック電動化で中国メーカーが欧州で躍進!? サニーが物流用の電動トラクタを市場投入
三一が欧州市場に投入する4×2電動トラクタ「e263」

 中国の三一トラック(サニー)は2025年9月12日、バッテリーEV(BEV)大型トラックのポートフォリオを拡大し、4×2電動トラクタ(セミトレーラけん引車)の「e263」を2026年第1四半期に欧州市場に投入すると発表した。

 同社は中国の大手建設機械メーカー・三一重工のトラック部門で、大型車の電動化では世界的なリーダーとなっている。

 サニーの欧州市場でのプレゼンス拡大は、ドイツのコンクリート機器大手・プツマイスターの支援を受けている。2012年にサニーグループの子会社となったプツマイスターは物流用トラックでもシームレスなサポートを提供する。なお、サニーは欧州への注力を強調するため「Supported by Putzmeister」というラベルを掲げている。

 4×2後軸駆動の「e263」は636kWhという大容量のLFPバッテリーを搭載し、高効率のeアクスル(電動アクスル)と合わせて500kmを超える航続距離を確保した。連結総重量(GCW)は最大42トンだが、軽量化によりトラクタ単体の空車重量は10.9トンに収まっており、大容量バッテリーを積みながら高い積載量を実現した。

 充電は欧州規格のCCS方式(最大400kW)に対応している。また、将来的には大型BEV向けに欧州で規格策定が進められているMCS(メガワット・チャージング・システム)にも対応する予定だ。

 前後軸フルエアサスによる快適性と、長距離トラック向けに特別に設計されたという800Vアーキテクチャのデュアルモーター式eアクスルにより効率を高めた。モーターの出力/トルクは420kW/1000Nm(連続)、730kW/1760Nm(ピーク)、馬力に直すと最大で980hpを発揮する。効率化のため電動モーターに2段トランスミッションを組み合わせている。

 BEVでも効率性・信頼性・柔軟性が求められるようになっており、サニーはそのために3種類のパワーテイクオフ(PTO)を開発した。電動式の「ePTO」とメカニカル式の「mPTO」、ギアボックス式の「gPTO」だ。冷凍トレーラなど電気駆動のボディはePTO、ミキサー車など走行中に油圧が必要な場合はmPTO、ダンプなど大出力を要する場合はgPTOが適しているという。

欧州車を圧倒するTCOを訴求

トラック電動化で中国メーカーが欧州で躍進!? サニーが物流用の電動トラクタを市場投入
8×4電動シャシーの第1世代にあたる「408P」ミキサー車。欧州の新・一般安全規則(GSR2)に対応するなど安全性を高めた

 今や中国はBEVの超大国となっている。サニーの電動トラクタは世界中で4万台が稼働しており、その経験から安全性を中心に据えた開発を進めている。e263でも欧州の新しい一般安全規則(GSR2)の法定要件を超え、これにより安定した稼働と事故ゼロを目指している。

 BEVトラックはCO2削減と騒音の減少など社会的な恩恵があるいっぽう、運送会社にとっては総保有コスト(TCO)の低減がメリットとなる。同社によるとe263の初期費用は欧州のディーゼル車より「わずかに」高くなるものの、市場に投入されている全BEVトラックの中で、最も早く投資額を回収できるTCOの低さがサニーのトラックの特徴だという。

 サニーは提携するオールトラックスを通じて欧州全土に700以上のサービスネットワークと、プツマイスターによる部品センターを備え、24時間365日のロードサービスとテレマティクス、最長10年のフルサービス契約を提供する。

 建設業界向けトラックとしては「408P」および「e435」が欧州市場に既に投入されている。製品・事業開発責任者を務めるケビン・アイシェル氏は、その実績を強調した上で次のようにコメントした。

「e263の発売は、8×4駆動の建設用電動シャシー『408P』(第1世代)と『e435』(第2世代)の実績に基づくものです。これらのトラックは先進技術と優れたTCO、そして信頼性により欧州の建設業界に新たな基準を確立しました。

 弊社はプツマイスターの支援を受けて4×2駆動の新型トラックとしてe263を発売し、定評のあるe435と共に二つの電動モデルをラインナップしました。これにより建設業界のみならず、幅広い用途に合わせたソリューションを提供します」。

 サニーはe263トラクタを2026年第1四半期に納車を開始する予定で、同年末までにリジッド(単車)系のバリアントを市場に投入する計画だという。

【画像ギャラリー】欧州市場を攻略中のサニーのBEV大型トラック(5枚)画像ギャラリー

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