中国の大手建設機械メーカー・三一重工(SANY)のグループ会社が、バッテリー電気式大型トラクタで世界記録を樹立したようだ。合計1MWh以上の電池を搭載し、トレーラ・積み荷と合わせた連結総重量40.45トンの三一「魔塔1165」トラックが、途中充電なしで公道を817.5km走行することに成功した。
ちなみに去年、テスラの大型トラック「セミ」が連結総重量8.2万ポンド(37.2トン)で500マイル(805km)の走行に成功している。三一の挑戦はこれを念頭に置いたものとみられ、BEVトラックでも米中の競争が始まっている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/SANY Group
中国メーカーが世界記録を樹立
「三つの一流」から「三一」を社名とする三一重工(SANY)は中国大手の建設機械メーカーで、世界でも有数の規模を誇る。
その子会社で大型トラックを製造する三一重カ(カは「上」の下に「ト」という漢字で、「貨車(トラック)」を意味する。以下、「三一」)が、バッテリー電気式(BEV)大型トラックの世界記録を樹立したようだ。
三一グループによると、連結総重量(GCW=トラクタ・トレーラと積荷を含む車両全体の重量)40.45トンの「魔塔1165」トラックが2023年6月に行なわれた実走行で817.5kmを走破し、BEVトレーラによる無充電の航続距離でギネス世界記録に認定されたという。
三一が本拠とする湖南省長沙市を6月6日に出発した魔塔1165トラックは、高速道路を利用して広東省深センに移動し、その後6月7日に、同省の東莞市に到着した。約15時間の運行中、途中充電は行なわず、走行距離は817.5kmとなった。
日本とも意外な関係
出発前にトラックスケール(積載・連結状態のままトラックの重量を計測することができるはかり)で図った実車の連結総重量は40.45トン。いわゆる「電費」に相当する1km当たりの平均エネルギー消費量は、1.17kWh/km だった。
建設機械メーカーの三一グループは日本での知名度は高くないが、コンクリートポンプ車では世界首位級。日本では東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故の際に、冷却水の循環ができなくなった使用済み核燃料プールへの注水作業にコンクリートポンプ車が使われた。
当時、国内最長のブーム長を誇るプツマイスター(ドイツ)製のコンクリートポンプ車(ブーム長52/58メートル級)が手配されたが、それでも長さが足りない場合に備えて三一重工に62メートル級ポンプ車の購入が打診され、同社から無償提供されている(4月には実際に注水作業を行なっている)。
その三一グループがトラック事業に参入したのは2017年で、トラックでは中国企業の中でも後発のメーカーとなる。
ちなみに米国のテスラが航続距離500マイル(約800km)を謳う大型BEVトラック「セミ」を発表したのも2017年だ。テスラ・セミは当初の計画よりかなり遅れたものの、2022年12月に第1号車を納車し、併せて500マイルを実際に走行する動画が公開された。
三一にとってはテスラ・セミがベンチマークとなっているようで、同社の董事長(中国企業における会社のトップ)が、「中国のトラックドライバーにとってテスラが最良の選択になるまで、われわれは黙って見ているのか」と述べたとされる。
三一が総重量40.5トンで817kmを無充電で走行する動画を公開して世界記録の更新をアピールしたのは、こうしたテスラへの対抗意識がありそうだ(テスラは37.2トン/805km)。
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